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2024年4月6日(更新:2025年10月22日)
東海地方の製造業の概観
東海地方は、日本のものづくりを牽引する中心地の一つです。愛知県ではトヨタ自動車をはじめとする自動車メーカーや部品サプライヤーが集積し、三重県ではHonda(本田技研工業)などの製造拠点が地域産業を支えています。さらに、静岡県ではスズキやヤマハ発動機などの輸送機器メーカーが集まり、二輪・四輪・船外機といった幅広いモビリティ製品を世界に発信しています。
自動車に限らず、電機、半導体、精密機器、化学など多様な分野で高い技術力を持つ企業が集まっており、東海地方全体で日本の製造業の中核を形成しています。その技術力と生産体制は、国内のみならず世界市場においても重要な役割を果たしています。
地域ごとの特色と企業の分布
・愛知県
愛知県は、世界的に知られるトヨタ自動車を中心に、自動車産業が圧倒的に発展している地域です。県内にはデンソー、アイシン、ジェイテクト、豊田自動織機、トヨタ紡織、豊田合成など、いずれも年商1兆円を超える主要サプライヤー企業が集積しており、高度な技術力を基盤としたBtoBビジネスを展開しています。これらの企業は、自動車の電動化・自動運転・軽量化といった技術革新を支える中核的存在であり、世界のモビリティ産業を牽引しています。
また、自動車関連にとどまらず、三菱重工業や三菱電機、ヤマザキマザック、ブラザー工業といった企業も県内に拠点を構えています。航空宇宙、電機、工作機械など幅広い分野で研究・生産が行われており、愛知県は“自動車王国”であると同時に、日本のモノづくりの総合拠点として発展を続けています。
名古屋市をはじめ、豊田市、刈谷市、岡崎市など県内各地に研究所や工場が点在し、地域経済を支える重要な役割を担っています。自動運転やロボティクス、航空宇宙技術など、次世代を見据えた研究開発も盛んで、愛知県はまさに日本の産業技術の中心地といえます。
・三重県
三重県は、山や海など自然豊かな環境の中で、製造業が幅広く発展している地域です。Honda(本田技研工業)の製造拠点をはじめとする自動車産業に加え、半導体、化学工業、繊維など多様な産業が根付いています。
特に四日市市には石油化学や素材関連企業が集積し、日本有数の工業地帯を形成しています。近年では、世界最大級のフラッシュメモリー工場として知られる「キオクシア四日市工場」が大きな注目を集めています。国内外から優秀な半導体エンジニアが集まり、最新の製造技術や設備を活かした開発が進められています。
他にも、東ソーや三菱ケミカルなどの化学メーカーも四日市市に研究所を構えており、素材・電子・化学の各分野が連携しながら、三重県の産業基盤を支えています。
・岐阜県
岐阜県は、伝統的な工芸品から最先端の機械・素材産業まで、多彩なモノづくりが息づく地域です。古くから刃物や美濃和紙といった伝統産業が発展しており、カイインダストリーズなどの刃物メーカーが高い技術を受け継いでいます。
大垣市に本社を置くイビデンは、半導体パッケージ基板や電子部品の開発で世界的に知られ、素材技術と精密製造の両面から県内産業を支えています。可児市のカヤバ(KYB)は、自動車や鉄道、航空機向けの油圧技術に強みを持ち、モビリティ分野の安全性と快適性の向上に貢献しています。
また、政府は防衛費として2023年度から2027年度までの5カ年で43兆円の予算を投じ、抜本的な防衛力強化を掲げています。こうした中、防衛事業を代表する川崎重工業が、防衛・航空宇宙部門の中核を担う工場を各務原市に設置している点も注目されます。
・静岡県
静岡県は、自動車や輸送機械、精密機器などの製造業が盛んな地域です。浜松市にはスズキやヤマハ発動機、本田技研工業の拠点が集まり、二輪・四輪・船外機など多様なモビリティ製品の開発・製造が行われています。これらの企業群は、戦後の日本の輸送機器産業の発展を牽引してきた地域ネットワークを形成しており、現在も世界市場における競争力を保ち続けています。
一方で、東部地域では光学・精密機器の産業集積が進んでおり、富士フイルムやキヤノン、テルモなどが研究・生産拠点を構えています。医療機器、カメラ、化学素材など、生活や産業を支える分野で幅広い技術開発が行われており、静岡県は“輸送機×精密機器”の両輪で日本の製造業を支える重要な拠点となっています。
また、地理的にも東西を結ぶ中継地点としての利便性が高く、東名高速道路や東海道新幹線といった交通網が整備されていることから、物流・研究・生産の連携がスムーズに行える点も大きな強みです。地域全体で「効率的かつ高品質なものづくり」を実現しており、静岡県は今後も日本の産業基盤を支える存在として発展を続けています。
各企業の新卒採用状況
東海地方はトヨタ・Honda・三菱重工・三菱電機など日本を代表する企業の数々が開発・製造拠点を構えるなど、製造業が非常に盛んな地域です。そのため理系学生の採用に積極的な企業が多く存在する一方、機械・電気電子・情報・化学などを専攻できる大学の数が限られています。
関東・関西と比較すると「求人数>理系就活生の人数」の乖離が特に顕著な地域です。そのため県内だけでなく県外の理系学生を採用したいといった声が多く、説明会・面接をオンラインで開催している企業も増えています。
※マメ知識:東海地方で工学部・理工学部のある大学について
愛知県内では、名古屋大学、名古屋工業大学、豊橋技術科学大学といった国立大学をはじめ、名城大学、南山大学、中京大学、愛知工業大学、中部大学、豊田工業大学などの私立大学が理工系教育を支えています。
ただし、三重県だと三重大学、岐阜県だと岐阜大学といった国立大学のみが該当します。関東や関西と比べると工学系の学部を持つ大学の数は限られており、これだけの企業群が存在するにも関わらず、理系学生数が求人数と比較しても少ないことが現状となっています。
まとめ
東海地方は、日本を代表する製造業の中心地の一つです。自動車だけでなく様々な産業が活発であり、日本のみならず世界においても重要な役割を果たしています。また、山や海などの自然が豊かであり、日本の中心部に位置していることから西日本・東日本に対してもアクセスが良いことも特徴です。
※参考記事
首都圏の製造業を調査:一都三県(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)におけるものづくりの特徴について
北関東の製造業を調査:栃木県、群馬県、茨城県におけるものづくりの特徴について
北陸・甲信越の製造業を調査:石川、富山、福井、新潟、長野、山梨におけるものづくりの特徴について
関西の製造業を調査:大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県におけるものづくりの特徴について
中国地方の製造業を調査:広島、岡山、山口、鳥取、島根におけるものづくりの特徴について
九州の製造業を調査:福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島におけるものづくりの特徴について
※関連リンク
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