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2024年10月17日(更新:2025年10月20日)
一都三県(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)は、日本の製造業において重要な拠点となっています。首都圏であり、交通や物流が発達していることから、多様な製造業の本社や事業所が集積し、技術力と生産力を高めています。今回は、各都県の製造業の特徴について詳しく見ていきます。
東京都:本社機能と技術革新
東京都は、日本の政治・経済の中心地であり、多くの大手企業が本社を構えています。一般的には「本社や営業・企画の街」という印象が強いものの、実際には製品設計や研究開発を担う拠点も数多く存在します。
■23区におけるものづくり
ニコンは品川区に本社を移し、光学・映像・精密測定の開発体制を強化しています。大田区にはディスコの羽田R&Dセンターや東京計器の本社があり、精密加工装置や制御・計測システムの開発が進められています。板橋区のタニタでは健康計測機器の研究・設計が行われ、千代田区の能美防災は都市の防災インフラを支える製品開発を行っています。
また、大阪屈指のメーカーであるキーエンスは港区台場に東京研究所を設置し、センシングや画像処理といったコア技術の研究・設計を進めています。オフィス街の中にも、都市型の研究開発拠点が確かに根付いています。
■23区外におけるものづくり
23区内だけでなく23区外にもメーカーが多く存在し、特に西東京エリアには工業地帯が広がっています。
日野自動車、オリンパス、東京精密など名立たる企業が西東京エリアに本社を構えており、自動車、医療機器、精密測定機器など多種多様な開発や製造が活発です。
※マメ知識:企業×大学における産学連携も活発!
東京都は産学連携が進んでおり、大学や研究機関と企業が協力して新技術の開発を進めています。
東京大学・東京科学大学などの国立大、東京理科大学・芝浦工業大学・東京電機大学などの私立大において、研究成果を活かした共同プロジェクトも多く、AIやロボティクス、バイオなどの先端分野で新しい技術革新が生まれています。こうした取り組みにより、東京都は研究と産業が共存する先端技術の集積地として注目を集め、製造業の未来をリードする拠点となっています。
神奈川県:自動車産業と多様な製造業
神奈川県は、日産自動車、いすゞ自動車、三菱ふそうトラック・バスの本社を中心に、自動車産業が非常に盛んな地域です。さらに横浜・川崎エリアには、エレクトロニクスや通信、精密機器など多彩なメーカーが研究開発拠点を構えており、首都圏の中でも屈指の技術集積地となっています。
■横浜・川崎エリアにおけるものづくり
横浜・川崎エリアは、都心からのアクセスと広い敷地を両立できる立地を活かし、各社が研究所や開発センターを設置しています。
横浜市では、日産自動車のグローバル本社が次世代モビリティに向けたソフトウェアやクラウド技術の開発を進めています。パナソニック オートモーティブシステムズは車載システムやADASなどを手がけ、オートリブはエアバッグやシートベルトなどの安全技術開発を行っています。
また、三菱重工 横浜製作所は船舶修理に加え、AIとフィジカル技術を融合した「Yokohama Hardtech Hub(YHH)」を運営し、産学連携による新技術の創出を推進。川崎市ではNEC 玉川事業場が通信・AI・量子技術などを研究し、ミツトヨが本社・川崎工場で精密測定機器の開発を行うなど、横浜・川崎は都市生活と研究開発が共存する地域として発展しています。
■その他地域におけるものづくり
横浜・川崎以外にも、厚木や海老名、藤沢、相模原などには多くのメーカーが集まっています。ソニーは厚木に研究所を構え、エレクトロニクス技術の最先端研究を推進。厚木・海老名エリアには自動車部品メーカーも多く、電動化や安全支援システムなどの開発が進められています。
また、総合車両製作所(横浜市金沢区)やジャパンマリンユナイテッド(横浜市鶴見区)など、鉄道車両・造船といった重工業の拠点も神奈川県内に多く存在します。神奈川県は自動車産業からエレクトロニクス、エネルギー分野まで幅広い産業が共存し、地域全体で日本のものづくりを支えています。
千葉県:素材・エネルギー産業が集積
千葉県は、素材・エネルギー産業が特に強い地域として知られています。東京湾沿いには日本有数の京葉工業地帯が広がり、石油化学コンビナートを中心に多くの企業が集積しています。市原市周辺には三井化学やJNC(旧チッソ)などが拠点を構え、石油化学製品、合成樹脂、プラスチックなどの基礎素材を製造しています。これらの製品は国内外の幅広い産業に供給され、千葉県は日本の素材産業を支える重要な生産拠点となっています。
また、食品やモーター開発といった分野でも世界的に知られるメーカーが存在します。野田市に本社を構えるキッコーマンは、伝統的な醤油づくりを基盤としながら、世界100か国以上で製品を展開しています。マブチモーターも千葉県に本社を置き、小型モーターの世界トップクラスメーカーとして自動車、家電、産業機器など多様な分野で活躍しています。素材から日常生活を支える製品まで、幅広い産業分野が県内で息づいています。
さらに、千葉県は優れた交通インフラと港湾機能を備えており、産業発展の基盤を形成しています。東京湾岸の臨海エリアでは、京葉港や千葉港などを中心に原材料の輸入と製品の輸出が活発に行われています。成田国際空港の存在も、物流・貿易の面で大きな強みとなっています。こうした地理的優位性を背景に、千葉県はエネルギー・化学・食品・精密機械といった多彩な製造業が共存する、日本のものづくりを支える重要な地域として発展を続けています。
埼玉県:自動車・自動車部品と技術研究
埼玉県は、自動車関連産業が非常に強い地域として知られています。県内には自動車メーカーや自動車部品メーカー、研究開発拠点が数多く集積しており、高品質な製品を国内外に供給しています。特に、世界的な自動車部品メーカーであるマレリは本社をさいたま市に構え、自動車の内外装やエンジン部品、電動化システムに関する開発を通じてグローバルな技術革新をリードしています。
また、本田技術研究所は和光市に本社を構え、ホンダの新技術開発や次世代モビリティ研究を支える中核拠点として機能しています。さらに、テイ・エステックやエフテックなどの自動車部品メーカーも県内各地に拠点を置き、シートや内装部品、シャーシ部品などを幅広く製造しています。これらの企業は、軽量化や安全性の向上、電動化といった技術開発を通じて、自動車産業の進化を支えています。
加えて、UDトラックスも上尾市に本社を構え、大型商用車の開発・製造・販売を行っています。同社は商用車の電動化や自動運転技術にも積極的に取り組んでおり、グローバル市場で高い評価を得ています。こうした取り組みから、埼玉県は「走る」「運ぶ」に関わる技術の集積地として、日本の自動車産業を支える重要な役割を担っています。
まとめ
一都三県は、それぞれ異なる強みを持ちながら、日本の製造業を支える重要な地域です。東京都は先端技術産業、神奈川県は自動車や多様な製造業、千葉県は化学・エネルギー、埼玉県は自動車・部品分野が中心に発展しています。
自動車産業に目を向けると、完成車メーカーだけでなく、その技術を支える高い専門性を持つサプライヤーも数多く存在します。BtoBの世界は日常生活では見えにくいですが、理系の専門性を活かせるキャリアの選択肢が豊富にあります。気になる分野があれば、ぜひ多角的な視点から調べてみてください。
※参考記事
北関東の製造業を調査:栃木県、群馬県、茨城県におけるものづくりの特徴について
北陸・甲信越の製造業を調査:石川、富山、福井、新潟、長野、山梨におけるものづくりの特徴について
関西の製造業を調査:大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県におけるものづくりの特徴について
東海地方の製造業を調査:愛知県、三重県、岐阜県におけるものづくりの特徴について
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九州の製造業を調査:福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島におけるものづくりの特徴について
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