自動運転とMaaSが描く未来社会:進化するモビリティ革命や大阪万博の導入事例

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近ごろニュースでよく聞く「自動運転」や「MaaS(Mobility as a Service)」。新しい技術の話題にとどまらず、私たちの移動の当たり前を変える大きな流れ になっています。たとえば、家の前まで自動運転の車が迎えに来て、スマホひとつで電車やバス、シェアサイクルまでシームレスにつながるとしたらどうでしょう。

通勤や旅行、買い物や物流までがもっと便利で効率的になり、街の姿や暮らし方そのものが変わっていきます。そして、この変化の土台には センサーやAI、通信、制御 といった理系の技術が深く関わっています。自動運転の今と未来、そして世界各国の挑戦を見ていきましょう。

クルマが自分で走る時代 ― 自動運転の現在地

自動運転とは、クルマが人間に代わって走行を担う技術です。センサーやカメラ、レーダー、AIが車周辺の状況を認識し、加減速やハンドル操作を自律的に行います。

 

国際的には、自動運転はレベル0〜5の6段階 に分類されています。現在市販されている車の多くはレベル2に相当し、運転支援を組み合わせて「部分的な自動化」を実現しています。

その代表例が ADAS(先進運転支援システム) です。車線逸脱防止、衝突被害軽減ブレーキ、アダプティブクルーズコントロール(ACC)などがあり、すでに私たちの生活の中で利用されています。

 

■参考記事

以前、「ADAS」について詳しく解説した記事もあります。センサー技術や画像認識、AIアルゴリズム、通信技術など、自動運転を支える基盤について触れていますので、関心があればぜひ参考にしてみてください。

ADAS技術とは?自動車業界のトレンドを探る。理系学生のための就活ガイド

 

移動の概念が変わる ― モビリティ革命とMaaS

「モビリティ革命」とは、交通手段や移動の捉え方そのものが変わることを指します。その象徴的なキーワードが、MaaS(Mobility as a Service = サービスとしての移動)です。

 

MaaSは北欧・フィンランドで始まり、今では世界中に広がりつつあります。国土交通省はこれを「ICTを活用してあらゆる交通をクラウド化し、マイカー以外の移動手段をひとつのサービスとして統合する新たな移動の概念」と定義しています。

従来はバス・電車・飛行機などを個別に予約して利用していましたが、MaaSが普及すれば、スマホひとつで最適な経路検索から予約、決済までを一括で完結できるようになります。

 

■MaaS普及の背景

・都市化による渋滞や環境問題
・気候変動への対応(低炭素社会の実現)
・自動運転や電動車両の進化
・シェアリングエコノミーの広がり
・高齢化社会への対応
・地方の交通空白地帯と過疎化問題
・ICT・データ利活用の進展
・観光需要やインバウンド対応
・持続可能な都市政策(スマートシティ連携)
・公共交通の収益性改善・効率化

 

これら多様な要因がMaaSの普及を後押ししています。モビリティ革命は単なる「便利な移動」の実現にとどまらず、社会の仕組みそのものを変える動きです。マイカーを所有せず、必要なときに移動サービスを利用するスタイルが一般化すれば、都市のあり方や暮らし方は根本から再設計されていくでしょう。

 

未来を動かす企業の挑戦 ― 世界と日本の事例から

自動運転やMaaSは、すでに社会実装フェーズに入っています。特に2025年の大阪・関西万博では、会場アクセスや場内移動に次世代モビリティが導入され、日本発の取り組みが注目されています。

 

■大阪・関西万博2025における取り組み

・いすゞ「エルガEV」:Osaka Metro・南海バス・阪急バスの3社が合計29台を導入し、桜島駅〜会場を結ぶシャトルバスとして運行。
・場内バス「e Mover」:会場内で自動運転バスを運行し、来場者の回遊性を高める。
・パーソナルモビリティ:会場内で歩行者と混在するエリアを想定し、来場者が試乗体験できる自動走行型モビリティを展開。
・In-motion Charging EVバス:走行中に架線から充電できる電動バスを導入し、長時間運行と持続可能な公共交通を実証。
・空飛ぶクルマ(eVTOL):会場周辺の「EXPO Vertiport」を拠点に、SkyDriveなどの機体が自動運行技術を活用して実際に飛行を披露。

 

■国内企業の取り組み

・Tier IV:オープンソース自動運転ソフト「Autoware」を基盤に、自動運転バスや遠隔監視システムを開発。
・デンソー:V2Xを活用したエネルギーマネジメントを実証。モビリティと電力の統合を推進。
・アイシン:自動バレー駐車や駐車場管理システムを実証。都市インフラとの連携を強化。
・パナソニック:配送ロボットを活用したラストワンマイル実証を展開し、物流効率化を支援。

 

■海外企業の取り組み

・Waymo(米国):自動運転タクシーを商用運行。完全無人運転サービスを実現。
・Tesla(米国):「Autopilot」と「Full Self-Driving」を進化させ、ソフトウェア更新で自動運転性能を向上。
・MaaS Global(フィンランド):アプリ「Whim」で複数の交通手段を1つのアプリで統合し、モビリティサービスを展開。
・バイドゥ(中国):自動運転タクシーを運行し、公共交通との接続を進める。

 

これらの事例は、モビリティ分野が完成車メーカーにとどまらず、部品メーカー・ICT企業・海外の新興企業まで広がっていることを示しています。自動運転とMaaSは、交通だけでなく都市のあり方や生活様式そのものを変える大きな転換点となりつつあります。

 

まとめ

自動運転とモビリティ革命は、すでに実用化に向けて動き出しています。新しい技術が社会と結びつくことで、私たちの暮らしや都市の姿も変わり始めています。

センサー、AI、通信、制御といった理工系の知識はもちろん、建築や都市計画、エネルギー、デザインなど、幅広い分野がこの変化に関わります。学んでいることが異なっても、それぞれの専門性が未来のモビリティ社会を形づくる一部となり得るのです。

自動運転やMaaSは、移動を便利にするだけでなく、環境問題や都市課題を解決し、より持続可能で豊かな社会を実現する原動力となっていくでしょう。

 

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