eVTOLが変える未来の移動:世界の最新プロジェクトと理系スキルが拓く空の時代

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通学や旅行で時間ワープできたら・・・そんな夢のような話が、いま現実に近づいています。電動で空を飛ぶ乗り物「eVTOL(イーブイトール)」の開発が世界中で進み、空を新しい移動の道に変える未来が、もうすぐそこまで来ているのです。

空を走る時代は、本当にやってくるのか?どんな企業がこの“空のモビリティ競争”をリードしているのか?そして、その先にある社会の姿とは。この記事では、最新の市場動向から国内外の取り組み、今後の展望までを、理系目線でわかりやすくひも解いていきます。

市場動向:世界と日本の“空”が動き出す

電動で垂直に離着陸できるeVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)。まだ本格的な実用化には至っていないものの、いま世界中で開発と投資の波が一気に高まっています。「ヘリコプターより静かで安全、飛行機よりも近距離に強い」——そんな次世代モビリティが、現実の空を飛ぼうとしています。

 

世界の市場は2025年以降に急成長期へ入り、2030年には数十億ドル規模に拡大するとの予測も。年平均成長率(CAGR)は30〜50%前後と、航空関連分野でも群を抜くスピード感です。予測の幅はあるものの、各社が共通して描くのは「2025年を境に、空の移動が新しい産業として立ち上がる」という未来像です。

 

日本でも動きは加速しています。国土交通省は「空の移動革命に向けたロードマップ」を策定し、2025年の大阪・関西万博を起点に社会実装が始まりつつあります。住友商事と日本航空が設立したSoracle(ソラカル)は、2026年に大阪上空での実証運航を予定し、2027年の商用運航を目指しています。

大阪府・大阪市とも連携協定を結び、空飛ぶクルマのネットワーク構築に向けたインフラ整備を進めています。一方で、オリックスは大阪・関西万博の会場に離着陸拠点「EXPO Vertiport(エキスポ・バーティポート)」を整備・運営。複数の運航事業者によるデモフライトを支援し、官民連携のもとで空飛ぶクルマの社会実装を後押ししています。

 

参考記事:大阪・関西万博を理系視点で巡る:理系の学びが次世代技術へ繋がる最前線を体感!

 

日本と世界の取り組み

1、日本の動き

日本では、「空の移動革命」を掲げた国土交通省のロードマップのもと、民間企業が次々と実証段階に踏み出しています。中でも注目されるのが、2025年の大阪・関西万博を舞台にした各社のプロジェクトです。

 

・SkyDrive × スズキ × 関西電力

電動エアモビリティの先駆けであるSkyDriveは、スズキの磐田工場で量産体制を確立し、2025年の大阪・関西万博で自社機体「SD-05」のデモ飛行を実施。夏から秋にかけての連続デモでは、大阪メトロが運営するOsakako Vertiportでの飛行も披露しました。さらに関西電力と連携し、充電インフラやエネルギーマネジメントの開発にも着手。機体製造から電力供給まで、産業の垣根を越えた実証が進んでいます。

 

・ANA × Joby Aviation

ANAホールディングスは、米国のeVTOLメーカーJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)と提携し、2025年の大阪・関西万博の会場で実際にeVTOL「S4」機によるデモ飛行を実施しました。パイロット1人が搭乗し、会場横の海上を約10分間旋回。日本初の公開飛行として、来場者や報道陣に大きなインパクトを与えました。

ANAはこのデモを起点に、2027年以降の「空のタクシー」事業化を目指して準備を進めています。航空会社ならではの安全運航ノウハウを活かし、商用化に向けた制度設計や運航ルールづくりにも関わっています。

 

・Soracle × Archer Aviation

住友商事と日本航空が共同設立したSoracle(ソラカル)は、米国のeVTOLメーカーArcher Aviation(アーチャー・アビエーション)と提携し、最大100機の購入権を取得。大阪を中心にエアタクシーサービスの実現を目指しています。

2025年の大阪・関西万博では、Archerの主力機「Midnight(ミッドナイト)」を展示。万博後はこの機体を活用し、運航ルールや地域連携、規制整備を進めながら、2026年の実証運航、2027年の商用化を視野に入れています。

Soracleは大阪府・大阪市と連携協定を結び、インフラや制度設計を含めた「空のネットワーク」づくりを推進。日本発のエアモビリティビジネスの中核として、官民一体で基盤づくりを進めています。

 

SUBARU(スバル)

SUBARUは、長年培ってきた航空宇宙技術を活かし、「Air Mobility Concept」を発表しました。電動化や自動化が進む中で、「空の移動革命」に向けた新たなエアモビリティの姿を示すコンセプトモデルです。同社が掲げるテーマは「より自由な移動」。

航空宇宙と自動車、それぞれのエンジニアが協力し、飛行実証に向けた検証を進めています。まだコンセプト段階ではあるものの、既存の航空機開発ノウハウを次世代モビリティに転用しようとする姿勢が、SUBARUらしいアプローチとして注目を集めています。

 

・Honda(ホンダ)

Hondaは、自動車と航空機の両分野で培った技術を融合させ、独自のeVTOL(電動垂直離着陸機)を開発しています。同社が掲げるテーマは「地上と空をシームレスにつなぐ移動」。

航続距離約400kmを想定したハイブリッド方式を採用し、現実的な運用を見据えた設計が特徴です。快適性や静粛性にもこだわり、移動そのものを豊かな体験にすることを目指しています。商用化は2030年代を見据えて開発が進められています。

 

2、世界の動き

上記でも紹介した通り、アメリカではArcher AviationやJoby Aviationを中心に、商用運航へ向けた認証やインフラ整備が急速に進んでいます。ここでは、アメリカ以外の国々で進む「空飛ぶクルマ」開発の最新動向を紹介します。

 

・EHang(中国)

中国のEHangは、二人乗り無人機「EH216-S」で世界初の運航者証明(AOC)を取得。上海や深センなど複数都市で、観光や都市間移動を目的とした初期の商用運航をすでに開始しています。

自律飛行による短距離移動を実現し、“空の地下鉄ネットワーク”構想のもと、世界の社会実装を先導しています。

 

・Volocopter(ドイツ)

ドイツのVolocopterは、2023年12月に大阪ヘリポートで日本初となる有人試験飛行を実施。大阪府・兵庫県と連携し、運航管理や安全性の検証、地域への理解促進を目的に「空飛ぶクルマ実装促進事業」の一環として行われました。

 

・Supernal(韓国)

韓国の現代自動車グループ傘下のSupernalは、2021年に設立され、「空に新しい道を作る(We’re building new roads in the sky)」を掲げています。

4〜5人乗りのeVTOL機「S-A2」を開発中で、航続距離は40〜60km程度とされ、2028年の商用運航開始を目標としています。米国やアジアを含む複数地域での展開を視野に、インフラ・制度・製造体制の整備を進めています。

 

・Eve Air Mobility(ブラジル)

ブラジルの航空機大手エンブラエル系列のEve Air Mobilityは、都市型エアモビリティ(UAM)向けeVTOLの開発を進めています。2025年6月には、サンパウロのRevo・OHIグループと最大50機の発注を含む契約を締結し、2027年後半の運航開始を目指しています。

4人乗り機は貨物仕様にも転換でき、エンブラエルの航空機開発ノウハウを活かして量産化を進行中。ブラジル国内では離着陸拠点の整備も進め、都市内移動の新たなインフラ構築をリードしています。

 

今後の展望

・制度面

国土交通省を中心に、「型式証明(機体の安全認証)」や「運航者証明」、低空域の交通を管理する「UTM(無人航空交通管理)」などを段階的に整備中です。欧米は有人実証、中国は無人商用化が先行しており、日本は安全性を最優先に、段階的な社会導入を進めています。

 

・技術面

バッテリーの高性能化や低騒音設計、AIによる飛行制御、サイバーセキュリティなどの開発が進行中。また、充電設備やエネルギーマネジメントなど、インフラ整備も重要なテーマになっています。

 

・ビジネス面

2025年の大阪・関西万博を皮切りに、都市部での「空のタクシー」や観光・物流の実証が始まる見通しです。その後は地方での移動支援や医療搬送などへ広がり、航空・鉄道・電力・通信といった産業が連携することで、“空を含めた新しい交通インフラ”の形成が進んでいきます。

 

eVTOL開発を支える主な職種

eVTOL(電動垂直離着陸機)は、電動化・自動化・軽量化といった複数の先端技術が融合した「空のモビリティ」の最前線です。

自動車と航空機の技術が交わる新領域として、電気電子・機械・情報・材料など幅広い専門分野の知見が求められています。下記のように様々な分野のエンジニアが活躍しており、日本、そして世界各国で空の移動を実現する人材がますます重宝されています。

 

・電動パワートレイン設計エンジニア

バッテリー、モーター、インバーターなど電動飛行機を動かす動力系を設計・評価。電気・電子・機械・材料系の知識が活かされます。

 

・飛行制御/航法ソフトウェアエンジニア

垂直離着陸から水平飛行へ移る「遷移飛行」や自律飛行技術、状態推定・モデル予測制御などの制御アルゴリズムを開発します。

 

・組み込みソフトウェア・データ解析エンジニア

機体制御を担うリアルタイムOS上でのソフトウェア開発をはじめ、飛行ログ解析やシミュレーション、サイバーセキュリティ対策などを担当。デジタル技術で「安全に飛ぶ」仕組みを支えます。

 

・製造エンジニア/生産技術エンジニア

機体・部品の組み立てや生産プロセス設計を担当(例:複合材パネルの成形、金属部品の加工、接着・ボルト留め・検査など)

 

・インフラ・電力システム技術者

バーティポート(離着陸場)や機体の充電設備、電力網との連系、エネルギーマネジメントの設計を担う職種。エネルギー供給やインフラ整備の観点から、空のモビリティを支える重要な役割を果たします。

 

・認証・運航安全エンジニア/制度設計者

機体の型式証明や運航者証明、低空域での運航ルール(UTM)など、法規制や安全基準の整備を担う職種。安全な運航を支える制度設計や認証プロセスの構築に関わります。

 

まとめ

世界が空のモビリティ時代へ動き出す中、日本でも万博をきっかけに社会実装が本格化しています。技術・制度・インフラなど、さまざまな分野で理系の力が求められる今。あなたの学びや興味が、未来の空を動かす原動力になるかもしれません。

 

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