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2025年10月15日(更新:2025年10月16日)
北陸・甲信越エリア(石川・富山・福井・新潟・長野・山梨)は、日本有数のものづくり集積地域です。伝統工芸や化学繊維といった地場産業に加え、精密機械・電子部品・医薬・食品・自動車関連・ロボットといった多様な産業が共存しています。この記事では、理系就活生に向けて、各県におけるものづくりの個性や意外な広がりを紹介します。
目次
石川県:建機からバス・二輪まで“動くモノづくり”が盛んな地
石川県は、伝統工芸の文化を受け継ぎながら、先端機械技術の分野でも発展を遂げてきた地域です。実は、同県は建設機械や車両関連製品など、「動くモノづくり」にも強みを持っています。
コマツ(小松市)の建設機械を筆頭に、ジェイ・バス(小松市)がバスボディの製造を、トランテックス(白山市)がトラックボディの開発を担い、大同工業(加賀市)は二輪・四輪用チェーンを世界市場へ供給しています。こうした企業群によって、輸送や走行に関わる技術が県内に幅広く集積しているのが特徴です。
一方で、電子・精密機器分野も盛んです。EIZO(白山市)は高精細モニター、加賀東芝エレクトロニクス(能美市)は半導体、アイ・オー・データ機器(金沢市)はPC周辺機器を手がけており、PCやディスプレイなど身近な製品の開発拠点が石川に集中しています。
さらに、津田駒工業(金沢市)、澁谷工業(金沢市)、三谷産業(金沢市)といった企業が並び、工作機械、繊維機械、充填装置、化学、ICT事業など、幅広い分野が並行して発展しています。石川県は精密機器の繊細さと重量機械の力強さを併せ持つメーカーが集まっている地域です。
※注目ポイント:全国から理系進学者が集まる金沢工業大学の存在
石川県には、全国から理工系学生が集まる金沢工業大学があります。実践教育が特徴で、「夢考房」と呼ばれる学内ものづくり拠点では、ロボットやソーラーカーなどの開発を学生主体で行っています。地域企業との連携も活発であり、「本当に就職に強い大学ランキング」で全国首位を獲得した実績もあることから、就職力の高さでも知られています。
富山県:医薬とアルミが共存する「素材×機械」の融合地帯
富山県は「くすりの富山」として知られ、古くから製薬・化学産業を中心に発展してきました。日医工(富山市)や富士フイルム富山化学(富山市)が医薬品や原薬・中間体の製造を手がけ、全国的にも高いシェアを誇ります。
一方で、富山は製薬だけでなく、アルミ建材や精密機械分野でも大きな強みを持っています。三協立山(高岡市)やYKK(黒部市)はアルミ押出や建材をグローバルに展開し、街のいたるところで製品を見ることができます。立山科学グループ(富山市)はセンサー・電子部品の研究開発を推進し、不二越(富山市)はロボットや軸受、切削工具など幅広い分野で世界市場とつながっています。
さらに、富山には半導体製造受託企業タワーセミコンダクターズの製造拠点が魚津市・砺波市にあり、半導体プロセスやウエハ処理など最先端技術の集積も進んでいます。富山湾沿岸には化学・エネルギープラントも多く、製薬・素材・機械・半導体が連携する複合的な産業構造が形成されています。医薬の街でありながら、機械・電気・材料系の理系人材にも幅広い活躍の場がある地域です。
福井県:繊維と化学の町から生まれた高機能素材の集積地
福井県は、古くから培われてきた繊維・染色技術を基盤に、現在では自動車内装や医療素材、機能性ウェアなどへ応用範囲を広げる「素材技術立県」として知られています。
セーレン株式会社(福井市)は高機能テキスタイルや自動車内装材を展開し、日華化学株式会社(福井市)は界面活性剤や化学薬品の分野で国内外に事業を広げています。さらに、田中化学研究所(福井市)はリチウムイオン電池材料を手がけ、次世代エネルギー分野でも存在感を高めています。
一方で、酒井化学工業(鯖江市)は発泡樹脂フィルムを、エイチアンドエフ(あわら市)はプレス機械を製造しており、アイシン福井(越前市)やシャルマン(鯖江市)といった企業も自動車部品や精密機器、メガネフレームなど多様な分野を支えています。
このように、福井は「繊維の街」というイメージを超え、高分子化学と精密機構が融合した産業構造を築いており、軽工業から高度な製造技術へと進化を遂げている地域です。
新潟県:食品と機械産業が共存する複合産業エリア
新潟県は、県央部の燕三条エリアに代表される金属加工と精密工具の街として全国的に知られています。研磨や板金、刃物といった分野で高い技術力を持つ中小メーカーが集積し、国内はもちろん海外ブランドとも取引を行うなど、地域全体で高度な職人ネットワークを形成しています。
一方で、新潟は金属加工だけでなく、食品と機械産業が共存する点でもユニークです。ブルボン(柏崎市)や亀田製菓(新潟市)といった全国ブランドの菓子製造企業に加え、コロナ(三条市)の空調機器、日本精機(長岡市)の車載メーター・ディスプレイ、北越コーポレーション(新潟市)の製紙、AIRMAN(燕市)のコンプレッサ・発電機など、重電・精密・食品産業が県内にバランスよく分布しています。
さらに、IHI原動機(新潟市)やリケン(柏崎市)といった重工・精密部品メーカーの拠点があり、“刃物からエンジンまで”を一県内で生み出せる産業多様性こそが、新潟のものづくりを支える最大の特徴といえます。
長野県:精密機器と電機が支える“東洋のスイス”
長野県は、時計やカメラ、電子部品といった精密機器産業を中心に発展してきた地域で、かつて「東洋のスイス」と称されたほど高い精度加工技術を誇ります。県中央の諏訪エリアを中心に、セイコーエプソン(諏訪市)、オリンパス(辰野町)、ミネベアミツミ(御代田町)などが集まり、計測・駆動・光学といった要素技術を分担しながら密接に連携しています。
また、ニデックインスツルメンツ(下諏訪町)や京セラ(岡谷市)ではモーターや電子デバイス分野で国内外に事業を展開。長野計器(岡谷市)やTAKISAWA(松本市)などの企業も、計測機器や工作機械で高い信頼を得ています。
一方で、長野は食品や医療機器といった生活に密接した分野でも強みを発揮します。アスザックフーズ(須坂市)のフリーズドライ食品やホクト(長野市)のきのこ製品など、地元の資源を生かした製造・加工技術が地域産業を支えています。精密電子から医療・食品まで、“生活と技術が共存する産業構造”こそ、長野県のものづくりの特徴です。
山梨県:ロボット・電子制御と精密加工が共存する高技術県
山梨県は、富士山麓を中心に電子・機械・精密加工産業が発展してきた地域です。代表的な企業であるファナック(忍野村)は、ロボット制御やCNC工作機械、サーボモーターといった自動化技術の分野で世界をリードしており、その存在が県内全体の技術水準を高めています。
また、山梨には世界的に注目されるメーカーが他にも多くあります。東京エレクトロン(韮崎市)は世界屈指の半導体製造装置の開発・生産で知られ、キトー(中巨摩郡)はホイストやクレーンの分野でグローバル展開を進めています。さらに、ルネサス エレクトロニクス(甲府市)はパワー半導体の生産拠点として、EVや再生可能エネルギー時代を支える重要な役割を担っています。
一方、県南部ではシャトレーゼ(甲府市)やモンデ酒造(笛吹市)など食品・飲料メーカーも多く、観光や農業と結びついた地域産業が活発です。山梨は、精密制御・ロボット・半導体・食品加工がバランスよく共存する「小規模高密度」の産業県として独自の存在感を放っています。
まとめ
北陸・甲信越エリアは、それぞれの県が異なる分野で日本の製造業を支える“技術の集合地”です。石川は動く機械、富山は医薬と素材、福井は高機能繊維、新潟は金属・食品・重工、長野は精密・医療・生活製品、山梨はロボット・半導体・精密制御と、多様な産業がバランスよく発展しています。
理系学生にとって、この地域には地方でありながら世界と直接つながる技術拠点が多く存在します。研究開発や設計、品質保証といった専門職から、製造・生産技術など現場に近い職種まで幅広いキャリアの可能性が広がるエリアです。それぞれの地域の特性を知り、自分の興味や専門を活かせる“ものづくりの舞台”を見つけてみてください。
※参考記事
北関東の製造業を調査:栃木県、群馬県、茨城県におけるものづくりの特徴について
首都圏の製造業を調査:一都三県(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)におけるものづくりの特徴について
関西の製造業を調査:大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県におけるものづくりの特徴について
東海地方の製造業を調査:愛知県、三重県、岐阜県におけるものづくりの特徴について
中国地方の製造業を調査:広島、岡山、山口、鳥取、島根におけるものづくりの特徴について
九州の製造業を調査:福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島におけるものづくりの特徴について
※参考情報
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