九州の製造業を調査:福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島におけるものづくりの特徴について

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九州地方の製造業は、各県がそれぞれの強みを活かして発展し続けてきた地域です。山や川が多く、海に囲まれた立地で、様々な産業分野が活発です。この記事は九州のものづくりに携わった方の意見を伺ったうえで記述しましたので、各県ごとの特徴を詳しく見ていきましょう。

福岡県:交通網の中心地として成長する製造業

福岡県は、九州地方の交通と経済の中心地として発展しており、自動車、産業機械、住宅設備機器、プラントなど多様な製造業が盛んです。トヨタ自動車九州や日産自動車九州といった主要メーカーの拠点が置かれ、幅広い自動車関連技術が集積しています。

 

北九州市には、安川電機(ロボティクス)、TOTO(住宅設備)、黒崎播磨(ファインセラミックス)、高田工業所(プラントエンジニアリング)など、日本を代表する企業が本社を構えており、重工・精密・環境分野まで幅広い産業が根付いています。

 

※マメ知識:福岡市ではIT系のスタートアップ支援も充実!

福岡市ではスタートアップ支援が充実しており、ヌーラボ(プロジェクト管理ツール)、株式会社YAMAP(登山向けGPSアプリ)、Fusic(AI・クラウド開発)など、IT・Web系を中心とした新興企業が次々と誕生しています。伝統的な製造業と新産業が共存し、相互に刺激し合うことで、福岡県は“次世代型ものづくり都市”としてさらなる発展が期待されています。

 

佐賀県:医薬品と自動車部品産業の成長

佐賀県は、有田焼に代表される陶磁器産業だけでなく、医薬品や自動車部品産業の分野でも成長を遂げています。久光製薬は鳥栖市に本社を構え、医薬品の製造を通じて国内外で高い評価を得ています。

 

また、自動車部品分野では、トヨタ紡織九州や小糸九州などの企業が自動車内装や照明システムの製造を手がけており、高い技術力を誇ります。さらに、佐賀県はDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に積極的で、企業と行政が連携しながら次世代の製造技術や新製品開発に取り組んでいます。

 

伝統産業と先端技術が共存する佐賀県は、地域全体での産業高度化と持続的な成長が期待されるエリアです。

 

長崎県:造船業とエネルギー技術

長崎県は、古くから造船業が盛んな地域で、三菱重工業長崎造船所が船舶製造や火力発電プラントの製造を担っています。大島造船所や佐世保重工業でも、大型船舶の建造に加え、脱炭素化を見据えたエネルギー技術の研究開発が進められています。

 

また、佐世保市の宇久島では、国内最大級のメガソーラー「宇久島メガソーラー」が計画されており、出力約48万kW・パネル約152万枚という規模で着工準備が進んでいます。長崎県は、造船で培った海洋技術と再生可能エネルギー技術を融合し、次世代のクリーンエネルギー開発拠点として進化を続けています。

 

熊本県:半導体と自動車関連産業の成長

熊本県は、九州における半導体産業の中心地として国内外から注目を集めています。世界最大の半導体受託生産企業であるTSMCが菊陽町に日本初の工場を設立しました。関連サプライヤーの進出も相次ぎ、熊本県全体が“シリコンアイランド九州”の再興を牽引しています。

 

また、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングも熊本に工場を構え、スマートフォン向けカメラのイメージセンサーを開発・製造しています。ソニーのイメージセンサーは世界中のスマホ搭載において圧倒的なシェアを占めていることでも有名です。

 

自動車関連産業も盛んで、本田技研工業の熊本製作所は二輪車のマザー工場としてグローバルな生産を支えています。さらに、平田機工は産業用ロボットや自動化装置を手がけ、半導体・自動車の両分野で高い技術力を発揮しています。熊本県は、半導体を軸に精密機械・自動車・ロボティクスが連携する“高付加価値モノづくり拠点”として進化を続けています。

 

大分県:鉄鋼・石油・化学産業の強み

大分県は、九州有数の工業集積地として鉄鋼・石油・化学産業を中心に発展してきました。大分市の臨海部には昭和電工や住友化学などの化学メーカーが拠点を構え、石油精製や化学製品の製造を行っています。また、日本製鉄をはじめとする鉄鋼業も県の基幹産業となっています。

 

加えて、自動車産業にも力を入れており、ダイハツ九州やマレリ九州が生産拠点を設けています。精密機器分野では、大分キヤノンや大分キヤノンマテリアルがカメラやインクジェット製品を製造しており、電子・化学・機械の技術が融合した産業構造が特徴です。近年では、環境対応型の素材やエネルギー技術への転換も進んでおり、次世代の産業拠点として注目されています。

 

宮崎県:食品加工と畜産の強み

宮崎県は、農業・畜産業が盛んで、地元産の肉や果物を活かした食品加工産業が強みです。宮崎市や都城市には食品加工工場が集まり、牛肉や豚肉の加工品が全国的に人気を集めています。また、果物を使ったジュースやスイーツなどの開発も進み、地域ブランドとしての発信力を高めています。

 

一方で、電子・機械分野の製造業も着実に拡大しています。宮崎市には旭化成の電子部品事業所である旭化成マイクロテクノロジが本社を構え、半導体材料や電子デバイスの生産が行われています。また、都城市や延岡市でも電子機器の組立や精密加工を担う企業が増加しており、農産業とハイテク産業が共存するユニークな産業構造を形成しています。

 

鹿児島県:焼酎・水産加工・食品加工産業が活発

鹿児島県は、焼酎の生産地として全国に知られており、多くの蔵元が地元産のさつまいもや米などを原料に、独自の風味を持つ焼酎を製造しています。これにより、鹿児島の焼酎は国内外で高い評価を受けています。

 

また、水産加工業も盛んで、鹿児島湾や東シナ海で水揚げされる新鮮な魚介類を活かした加工品が全国へ供給され、特にかつお節や干物などが地元の特産品として注目されています。さらに、食品加工分野ではアクシーズやジャパンファームといった企業がケンタッキーフライドチキンなどのチキン製品の生産に携わっています。

 

加えて、通信機器の内部基板材料を製造する大口電子など、多様な業種の企業が拠点を構え、鹿児島県は製造技術の幅広い発展に寄与しています。

 

まとめ

九州エリアは製造業の観点でも地域ごとに特色があり、理系学生にとって多様なキャリア選択肢が広がるエリアです。それぞれの地域の特色を理解し、自分の興味やスキルに合った産業や企業を見つけるヒントになると幸いです。

 

※参考記事
首都圏の製造業を調査:一都三県(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)におけるものづくりの特徴について
北関東の製造業を調査:栃木県、群馬県、茨城県におけるものづくりの特徴について
北陸・甲信越の製造業を調査:石川、富山、福井、新潟、長野、山梨におけるものづくりの特徴について
東海地方の製造業を調査:愛知県、三重県、岐阜県、静岡県におけるものづくりの特徴について
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