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2026年1月10日(更新:2026年1月10日)
「AIがコードを書いてくれるなら、プログラミングはいずれ不要になるのでは?」といった不安を耳にすることが度々あります。この問いに対して明確な正解を断言することはできません。技術の進化は速く、エンジニアを取り巻く環境は日々変化しています。
ただ、現時点の実務や企業の動きを踏まえると、プログラミングそのものがすぐに不要になる可能性は高くない、という見方もできます。一方で、AIによって“便利になる部分”が増え、エンジニアに求められるスキルや評価のされ方が変化していくのはほぼ確実です。
本記事では、AI時代におけるプログラミングの位置づけと、理系学生・理系就活生が意識しておきたい向き合い方を整理します。
目次
プログラミングは不要にならない
AIの進化によって、コードを書く作業そのものは着実に効率化されています。たとえば ChatGPT や GitHub Copilot では、簡単な関数の雛形作成、既存コードのリファクタ案提示(読みやすく整理する案)、エラー原因の切り分け補助などが日常的に使われています。テストコードの自動生成や、コメントから処理内容を推測してコードを書かせるといった使い方も増えています。
一方で、「プログラミング=コードを書くこと」ではありません。現場で求められるのは、何を作るべきかを整理し、仕様の曖昧さや制約を考慮しながら正しく動く形に落とし込み、品質と安全性を担保し続けることです。こうした工程は、現時点ではAIだけで完結しにくい領域です。
AIは指示に従って“それっぽい回答”を返すのが得意ですが、実際の開発では、仕様変更への対応、例外処理、他システムとの整合性、運用時の責任分界など、判断を要する場面が数多く発生します。最終的にどの実装を採用するかを決め、説明責任を持ち、品質を保証する役割は人に残ります。
つまり、AIはプログラミングを不要にする存在というより、コーディングや調査といった一部工程を効率化し、エンジニアが設計・判断・改善といったより重要な領域に時間を使えるようにする存在と捉える方が現実に近いと言えます。
AIで便利になることと、限界があること
AIが得意なことと、苦手なことを分けて理解すると、過度な期待も不安も減ります。
■AIで便利になりやすいこと
・定型的なコードの生成や修正案の提示
・既存コードの要約、リファクタ案の提案
・簡単なエラー原因の候補出し、調査の補助
・テストケースのたたき台作成、ドキュメント草案作成
■一方で限界が出やすいこと
・曖昧な要求を仕様に落とす作業(何を作るべきかの決定)
・システム全体設計(性能、拡張性、セキュリティ、運用を含む)
・現場の制約を踏まえた最適化(既存資産、納期、コスト、人)
・生成物の正しさを保証する判断(品質責任、説明責任)
AIは強力ですが、万能ではありません。特に実務では「正しく動くこと」「事故を起こさないこと」「利用者のユーザー体験」等の優先度が高いです。AIの出力をそのまま採用するのではなく、根拠を確認し、意図通りに動くか検証し、責任を持って採用する人が必要です。
メーカーとIT企業で進むAI活用の具体例
AI活用はIT企業だけの話ではありません。メーカーでも「ものづくり×ソフトウェア」が進み、AIは開発や運用の現場で使われ始めています。ただし、使われ方は業界や工程で少し違います。
■メーカーでの例
・車載ECUや組み込み開発で、実装のたたき台や修正案を作る補助として使う
・試験・評価の工程で、テスト観点の洗い出しや手順書の草案作成を助ける
・生産ラインのデジタル化やDXで、データ分析のコード、レポート作成を効率化する
・品質保証で、不具合報告の要約、原因候補の整理、再発防止策のドキュメント化を支援する
メーカーは「安全性・品質・規格」が重く、AIの出力は検証が前提になります。動けば良いではなく、仕様と責任の範囲を明確にして使うことが求められます。
■IT企業での例
・Webサービス開発で、画面実装やAPIの雛形作成、リファクタの提案を加速させる
・データ分析や機械学習(Machine Learning)で、前処理コード、検証コード、実験メモの作成を効率化する
・運用やSREで、障害対応の切り分け、ログの読み取り補助、手順書更新に使う
・プロダクト改善で、仕様の整理、ユーザー問い合わせの分類、改善案の叩き台作成に使う
IT企業でも、AIで全部が自動化されるわけではありません。むしろ開発速度が上がるほど、要件整理や設計、品質担保、運用の重要性が増していきます。
求められるスキルは「書く」から「設計・検証・運用」へ広がる
AIでコーディングが効率化されるほど、相対的に価値が上がるのは「コード以外」の部分です。これから評価されやすくなるのは、次のような力です。
・要件整理:何を作るべきか、優先順位は何かを言語化できる
・設計:データ構造、API設計、状態管理、権限、障害時の振る舞いを考えられる
・品質:テスト観点、再現性、検証、レビューができる
・運用:監視、障害対応、改善サイクルを回せる
・セキュリティ:脆弱性や権限設計を前提に判断できる
ここで重要なのは、最初から全部できる必要はないということです。ただ、AIを使う人ほど、設計と検証の理解がないと判断ができず、出力の良し悪しを見抜けません。AIが便利になるほど、基礎理解と設計視点の価値が上がると捉えるのが自然です。
理系就活生が今から身につけたい力と実践ステップ
理系就活生がAI時代に備えるなら、難しいことに手を出すより、土台を固める方が効果的です。特に次の3つは就活でも実務でも効きます。
・プログラミングの基礎体力
文法暗記よりも、条件分岐、ループ、関数、データ構造、例外処理を理解すること。AIの出力を読めるようになります。
・問題の分解力
やりたいことを小さなタスクに分け、手順に落とす力。研究や実験で培った思考と相性が良い領域です。
・検証する力
動けばOKではなく、想定外の入力、境界値、失敗時の挙動まで確認する癖。AI活用時代ほど重要になります。
■AIと上手く付き合うための実践ステップ
・小さな課題でAIを使う(バグ修正、簡単な機能追加、テスト追加)
・出力を鵜呑みにせず、理由や副作用を確認する
・成果物を残す(小さなアプリ、ツール、自動化スクリプトなど)
・何を考え、どう検証し、どう改善したかを説明できる形にする
AIは「ズル」ではなく「道具」です。道具として使える人ほど、生産性が上がり、学びも速くなります。
まとめ
AIの進化によって、プログラミングが不要になる可能性は高くありません。コード生成は便利になりますが、実務では要件整理、設計、品質保証、運用といった領域がより重要になります。メーカーでもIT企業でも、AIは作業を置き換えるというより、開発全体の進め方を変える道具として広がっています。
理系学生・理系就活生にとって必要なのは、AIに勝つことではなく、AIを使って自分の理解と成果を増やすことです。基礎を押さえ、問題を分解し、検証できる人は、AI時代でも価値が落ちにくい存在になります。まずは小さなアウトプットを一つずつ作り、一歩ずつ前進していきましょう。
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