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2025年12月8日(更新:2025年12月9日)
メーカーといえば「機械」「電気」「化学」といったイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし近年、メーカーの現場ではIT人材の重要性が急速に高まっています。
組み込みソフトだけでなく、DX推進、社内システムの改善、生産管理の高度化、生産ラインのデジタル化など、ITの役割はものづくり全体へと広がっています。
本記事では、メーカーで実際に必要とされているITスキルと、その活躍フィールドを理系就活生向けにわかりやすく解説します。
メーカーにおけるIT人材の役割はここまで広がっている
メーカーにおけるIT人材といえば「組み込みエンジニア」を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。製品の内部で動くソフトウェアを開発する仕事では、理系出身者が活躍しています。しかし現在では、それだけにとどまりません。
メーカー各社では、DX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進み、社内システムの刷新、業務プロセスの自動化、生産管理の高度化、生産ラインのデジタル化など、ITが関わる領域は工場・設計・間接部門にまで拡大しています。ITは「ものづくりを支える基盤」として日々進化しています。
製品そのものが「ソフト前提」の時代に
もう一つ大きな変化が、製品そのもののあり方です。現在の多くの製品は、ハードウェアだけで成り立つものではなく、ソフトウェアと一体になって価値を生み出す構造へと変化しています。単に「モノを作る」だけでなく、「どう制御し、どうデータを活用し、どう使われるか」まで含めて設計される時代になっています。
自動車分野を例に見ていきましょう。電動化の進展により車載ECUの数は増え、ADAS(先進運転支援システム)などの制御も高度化しています。自動ブレーキ、車線維持支援、運転支援機能などは、すべてソフトウェアによって成り立っています。もはやソフトなしに現代の自動車は成立しないと言っても過言ではありません。
同様の変化は、他の分野にも広がっています。
・家電分野:スマート家電、IoT連携、スマホアプリによる遠隔操作や状態管理
・医療機器分野:センサー制御、検査データのデジタル管理、クラウド連携
・産業機器分野:稼働データの取得、予防保全、ラインの遠隔監視
・消費財・サービス分野:製品と連動するスマホアプリ、会員管理アプリの開発
・社内向け領域:製造現場や営業部門で使われる業務アプリ、管理システムの開発
このように最近では、「製品そのものに組み込まれるソフト」だけでなく、「製品と連動するスマホアプリ」や「現場・業務を支えるアプリ」まで含めて、ITがものづくりに深く入り込んでいます。
つまり、「ハードが主役」の時代から、「ハード×ソフトが前提」の時代へと、ものづくりそのものの考え方が大きく変わってきているのです。
※参考記事の紹介:名立たるメーカーでもソフトウェア人材のニーズが拡大
ニュースイッチ引用:自動車メーカー、IT人材獲得に躍起…「魅力ある額を提示する」(ホンダ)
ダイヤモンドオンライン引用:トヨタとホンダが「ソフトウエア人材」争奪戦!自動車メーカーのIT技術者採用の課題を大解明、日産は出遅れ気味
メーカーで実際に求められるITスキルの種類
メーカーで必要とされるITスキルは、大きくいくつかの方向性に分かれています。単に「プログラミングができる」だけではなく、どの領域のITなのかによって求められる役割も大きく変わります。
① 組み込み・制御系スキル
製品そのものの中で動くソフトウェアを支える分野です。
・C / C++ を用いたマイコン制御
・リアルタイムOS
・センサー制御
・モーター制御、制御アルゴリズム
自動車、家電、産業機器、医療機器など、ハードと一体になって動く製品では欠かせない領域で、メーカーITの中核とも言える分野です。
② DX・業務改善系スキル
現場や間接部門の業務をデジタルで効率化していく分野です。
・Python、SQLによるデータ分析
・RPAによる業務自動化
・業務フローの可視化・改善
・ダッシュボードによる数値管理
製造部門だけでなく、営業・調達・管理部門など、会社全体の生産性向上に直結するITとして活用が進んでいます。
③ 生産管理・工場デジタル化系スキル
工場そのものをITで最適化していく分野です。
・生産管理システム
・MES(製造実行システム)
・IoTデータの取得・分析
・生産ラインの見える化・遠隔監視
「どこで、何が、どれだけ作られているか」をリアルタイムで把握し、生産性や品質を高める役割を担います。
④ 社内システム・IT基盤系スキル
企業活動の土台を支えるIT分野です。
・社内システムの開発・運用
・クラウド基盤の設計・構築
・セキュリティ対策
・ネットワーク管理
表には出にくい分野ですが、これが止まると会社全体が止まるという重要な役割を担っています。
メーカーのITスキルは、このように「製品を支えるIT」「現場を支えるIT」「会社全体を支えるIT」の3層構造で広がっており、理系学生が活躍できるフィールドは年々拡大しています。
メーカーのIT職は理系の強みが活きる
IT企業とメーカーのIT職は、同じ「エンジニア」でも仕事の性質が大きく異なります。IT企業では、システムそのものが商品で、短いサイクルで開発と改善を回すスピード感が重視されます。
一方、メーカーのITは、製品・工場・品質・安全といったものづくりの根幹と強く結びついています。少しの不具合が生産停止や品質トラブルにつながることもあり、「止められないシステム」を扱う緊張感の中で仕事をする場面も少なくありません。そのため、次のような価値観が特に重視されます。
・短期改善よりも長期安定運用
・スピードだけでなく安全性・信頼性
・現場社員が使えるかどうか
こうしたメーカー×ITの現場では、理系学科ごとの強みがそのまま活かされやすい点も特徴です。
・情報系:組み込み、データ分析、DX推進などで幅広く活躍
・電気電子系:車載、制御、IoT、設備連携の領域で強み
・機械系:生産ライン×IT、設備データ活用で重宝される
・数物系:シミュレーション、最適化、アルゴリズム系と相性が良い
・化学系:材料開発、プロセス設計、品質管理、データ活用で強み
・生物系:医薬・食品・環境分野、バイオデータ解析などで活躍
・土木建築系:インフラ×IT、BIM/CIM、施工管理DXなどで需要が高い
このように、メーカーにおけるITは「情報系だけの仕事」ではなく、さまざまな理系分野と交差して成立する仕事だと言えます。そして、メーカーIT人材の本質的な役割は、現場とシステムの橋渡し役になることです。
ものづくりとIT、この両方を理解できる人材は非常に貴重で慢性的に不足しています。だからこそ、メーカー×ITの分野は今後も安定して需要が続く領域だと言えるでしょう。
まとめ
メーカーで必要とされるITスキルは、もはや組み込みだけに限られません。DX、社内システム、生産管理、工場のデジタル化、そしてソフト前提の製品開発など、ITの活躍フィールドはものづくり全体へと広がっています。
理系学生にとってメーカー×ITは、ハードとソフトの両方を活かせる魅力的な選択肢です。「ITに興味があるけど、ものづくりからは離れたくない」という人は1つの選択肢として検討してみてください。
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