医療分野で理工系のスキルを活かせる仕事とは?医療に貢献したい理系学生へ届けたい選択肢

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「医療に貢献したい」と思ったとき、多くの人が思い浮かべるのは医師・薬剤師・医薬品研究者など、いわゆる“医学系”や“生物・化学系”の職種かもしれません。でも実は、医療の現場やその裏側では、機械・電気電子・情報といった理工系のスキルが大きな力を発揮しています。

例えば、患者を診る医師の傍には、精密な検査装置や手術支援ロボットがあります。これらの技術は、理工系のエンジニアたちが日々開発・改良してきた成果です。この記事では、医療分野において理系スキルがどのように活きるのか、わかりやすく紹介していきます。

機械・電気電子・情報、それぞれのスキルが活きるフィールド

──「医療×工学」ってどういうこと?

医療分野で活躍すると聞くと、医師や看護師のような“医療系の国家資格を持つ人”を思い浮かべるかもしれません。でも実際は、工学的な知識や技術を持った理系人材の力も連動することで、医療分野の発展に繋がっています。

例えば手術支援ロボット、がんの早期発見に役立つ画像診断装置、患者の体調をモニタリングするウェアラブル機器など、これらはすべて、機械・電気電子・情報といった工学の知識がベースになっています。

 

こうした「医療×工学」領域は、医療工学(医用工学)とも呼ばれ、医学と工学を融合させて人の健康や命を守る技術を生み出す分野です。

 

【機械系】精密機構・構造設計で医療機器を支える

安全性と操作性の両立が求められるため、実は“人にやさしい設計”が鍵になります。

・内視鏡や手術支援ロボットの可動部、アームの設計
・超音波診断装置や人工呼吸器の機構設計、強度計算
・医療用ベッドや車いすなど福祉機器の改良 など

 

【電気電子系】センサーと制御で“正確”と“安全”を実現

医療機器は人体に直接関わるため、精度・ノイズ耐性・安全性の全てが重要。ここで電気電子の知識が活きます。

・心電図・脳波・SpO₂センサーなどの生体信号測定
・MRIやCTの回路制御・信号処理
・高周波治療器や電気刺激装置の電力制御 など

 

【情報系】AI・データ分析・ソフト開発で医療の“頭脳”を担う

医療機器の多くはソフトウェアで制御されており、組み込みソフトウェア開発者やアプリ開発者のニーズも増加中です。

・AI画像診断支援(例:がん・脳出血の自動検出)
・電子カルテ・ビッグデータの可視化・活用
・IoT×ウェアラブルでの健康管理・モニタリング など

 

【融合領域】ロボティクス・遠隔医療・再生医療など最前線へ

学際的な知識を持つ人材ほど活躍の場が広がるのが、これら最先端の領域です。

・手術支援ロボット:メカ+画像処理+リアルタイム制御
・遠隔診療機器:通信・センサー・UIの統合技術
・再生医療・生体材料:材料工学+生体適合性評価 など

 

現場に近い仕事、裏方として支える仕事

──医療に興味はあるけど、自分の専攻で関われるか分からない

そんな理系学生に向けて、理工系のスキルを活かして“医療に関わる仕事”の具体例を3つ紹介します。

 

■ 医療機器メーカーのエンジニア職

開発・設計・品質管理など、医療現場で使われる製品を形にする仕事です。
部署によっては現場の医療従事者の声を取り入れながら開発に携わることもあります。

・機械系:装置の構造・操作部の設計
・電気電子系:センサー・回路・制御の開発
・情報系:画像処理、UI設計、組み込みソフトなど

 

代表例:キヤノン(医用画像)、富士フイルム(内視鏡)、テルモ(循環器)、オムロン(家庭用医療機器)など

 

■ 医療現場のIT・機器運用担当

病院や医療系SIerで、医療ITシステムや機器管理を支える技術職です。

・情報系:電子カルテ管理、ネットワーク構築、セキュリティ対応
・機械・電気系:医療機器の点検、保守、技術サポートなど

 

※マメ知識:医療機器を扱う上で国家資格は必要?

病院内で医療機器の操作・管理を専門に行う「臨床工学技士」は国家資格が必要ですが、医療機器メーカーや病院の情報部門で働く技術者(いわゆるME技術者)には、資格が必須ではありません。なお、「ME2種」などの民間資格は任意ですが、医療業界への関心や基礎知識を示すアピール材料として評価される場合もあります。

 

■ ヘルステックや研究プロジェクトでの開発職

・ヘルステック企業:医療アプリ・健康管理ツールの開発
・大学や研究機関:医療AIや次世代医療機器の研究補助

 

いずれの仕事も短期・長期インターンシップ、説明会、技術イベントを通じて関わるチャンスはあります。大学・研究機関での研究補助に挑む場合、理工系×医療分野に関心のある教員を探すことから始めてみるのも有効です。

 

理工系から目指すには

「理工系の知見を活かして医療に関わりたい」と思った時、どんな一歩が踏み出せるか。ここでは学部生からの現実的なアクションを紹介します。

 

■医療に関わるためにできること

・医療系プロジェクトを扱う研究室に所属する(例:医療機器の研究、遠隔支援システム開発など)
・医療機器メーカーやヘルステック企業のインターンに参加
・医療分野のハッカソン、アイデアコンテスト、LT会に参加

 

※ハッカソンとは:エンジニアが集まり、チームで開発を行うイベントのこと。学生や初心者歓迎のイベントもある。

 

■企業探しのヒント

・医療機器、製薬、医療系IT、医療コンサルティング、医療機関など、医療の中でも様々な分野がある。
・製薬は生物/化学/薬学だけじゃない!生産技術、装置設計、AI開発など幅広い理工系のフィールドもある。
・理系であれば大学院生、学部生を問わず積極採用中の企業が多い。気になる企業にはエントリーを。

 

※参考記事:医療機器企業の技術者インタビュー

株式会社常光の電子設計技術者インタビュー:医療機器開発の挑戦と成長を支える「助け合い」

※参考記事:医療分野にAIから挑む学生インタビュー

AIエキスパート木口佳南さんのインタビュー記事:失敗を恐れない挑戦の軌跡と理系学部生に対するメッセージ

 

まとめ

医療の現場には、医療系の資格を持つ方々だけでなく、理工系の技術で支える方々も関わっています。医療機器や医療系アプリなどを作るためには、機械・電気電子・情報といった分野の力が必要不可欠。知らなかっただけで、自分にもできることがあるかもしれません。

また、医療分野だけに限らず、「興味はあるけど自分の専門性は活かせない」と思い込んでいる分野が他にもあるかもしれません。自分で自分にハードルを設けず、関心のある分野は積極的に調べていきましょう!

 

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