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2025年8月27日(更新:2025年8月27日)
実験や研究に打ち込む日々の中で、留学という選択肢は少し遠く感じるかもしれません。日本の大学生のうち、実際に留学する人は約3%と割合としても少ないです。この記事では、理系学部生が「留学」を選択肢に入れる価値と、具体的なメリット・デメリット、そして始め方までをわかりやすく解説します。
理系学部生が留学で得られる4つの価値
① “専門を応用する視点”が手に入る
日本では、決められたテーマを深く掘り下げる教育が中心ですが、海外では「その技術を社会にどう活かすか?」という応用の視点が重視されます。
多くの大学でProblem-Based Learning(PBL)や企業連携プロジェクトが導入されており、再生可能エネルギーや都市交通などの実社会の課題に、学生がチームで取り組む形式が一般的です。たとえばTU Delft(オランダ)では、技術提案型のPBLが活発に行われており、アメリカの大学でもコミュニティ・スクール×教育、バイオ×倫理など異分野をかけ合わせた学際的な取り組みが多く見られます。
こうした環境の中で、材料工学の知識を医療分野に応用したり、情報科学を教育現場に活かすなど、専門が“使える知識”に変わる実感が得られます。
② 実験・研究の「進め方」の違いを体験できる
海外のラボやプロジェクトでは、以下のような進め方が主流です。
・チームごとの役割分担とタイムマネジメント
・課題発見から仮説設計までを自分で組み立てるスタイル
・「途中経過」や「失敗」も積極的に共有する文化
こうした違いに触れることで、柔軟に動けるエンジニア/研究者としての力が磨かれます。さらに、日本だけでは得られない新たな視点に気づくことで、帰国後の研究や開発にも良い影響をもたらします。
③ 英語を“学ぶもの”から“使うもの”へ
理系分野には共通の専門用語や図表が多く、英語が完璧でなくても十分に意思疎通できる場面があります。留学を経験することで「英語=壁」ではなく「伝える手段」として自然に使えるようになり、プレゼンやディスカッションでも自信を持って発信できるようになります。これはTOEICなどのスコアでは測れない、“実践的な語学力”として評価される点です。
④就活で評価されることがある
理系学生の就職活動では、「留学経験」もプラスに働くことがあります。特に次のような観点で評価されやすいです。
・主体性・挑戦心:異国で学ぶという意思決定そのものが評価対象になる
・多様性への適応力:異なる文化や価値観の中で協働した経験は、グローバル化が進む企業で求められる力
・応用力・発信力:専門知識を現地で応用した経験や、英語での発信力は選考で差別化につながる
そのため、理系の専門性に加えて「海外での経験」を掛け合わせることで、採用担当者に「他にはない強み」として印象づけることができます。
※マメ知識:グローバル化が進む企業の特徴って?
メーカーやIT企業を中心に、多くの日本企業が海外市場を前提に事業を展開しています。
例えばメーカーでは、開発拠点や生産拠点を海外に置き、現地のニーズに合わせた製品を展開するケースが一般的です。自動車、電子部品、医療機器などは、グローバルでのシェア獲得が競争力に直結します。
IT企業も同様に、ソフトウェアやクラウドサービスを多言語対応で提供し、海外拠点と協働するプロジェクトが増加傾向です。こうした企業では、英語力以上に「異なる文化や考え方を理解し、チームで成果を出す力」が重視される傾向があります。
参考記事:JFEコンテイナー株式会社 Y.Hさんインタビュー:品質管理のやりがいと、海外立ち上げを支えた実体験
不安やハードル:理系留学でよくある疑問
・学業や就活との両立が難しいのでは?
確かに理系だと忙しい瞬間が多々ありますが、すべてが長期留学とは限りません。近年は 2週間〜2ヶ月の短期集中プログラムや、海外大学の研究室に参加するインターン型の研究留学が増えています。これらは夏休みや春休みを利用して参加することもでき、卒業年月に大きな影響を与えません。
・専門的な英語についていけるか不安
理系分野の英語は日常会話とは異なり、共通の専門用語や図表を中心にやり取りされる“共通言語”です。そのため、文法の正確さよりも「いかに簡潔に伝えるか」が重視されます。実際に現地でディスカッションや実験の説明を繰り返す中で、次第に「聞き取れる・伝えられる」という実感が積み重なり、英語を“学ぶ対象”ではなく“使う道具”として自然に活用できるようになります。
・費用が高そうで踏み出せない
留学費用は確かに大きな壁ですが、理系学生向けの支援制度は意外と豊富です。たとえば、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金や、官民協働の「トビタテ!留学JAPAN」、さらには大学独自の給付型奨学金もあります。これらを組み合わせれば、自己負担を大幅に抑えて参加できる場合も少なくありません。また、欧州の一部大学は授業料が無料もしくは低額であることもあり、選択肢は広がっています。
・ 海外生活や文化の違いに馴染めるか心配
生活習慣や文化の違いに戸惑うことは誰にでもあります。ただし多くの大学には、留学生向けのサポートオフィスやチューター制度があり、学習面だけでなく生活面でも相談できます。また、現地学生との交流や寮生活を通じて「違い」を楽しむ感覚が身につくと、むしろ自分の考え方が柔軟になり、国際的な場での適応力として評価されるようになります。
理系におすすめの留学スタイル4選
理系学部生が選べる留学のスタイルにはいくつか種類があります。目的や経験値に応じて、自分に合った方法を検討してみましょう。
■ 研究インターン(短期〜中期)
海外の大学や研究機関で、現地のラボに参加して実験や開発を行うスタイルです。「実践的に手を動かしながら学びたい」「海外の研究現場を体験してみたい」という人におすすめ。研究内容によっては、日本では触れられないテーマや技術に関われることもあります。
■ サマープログラム(短期集中型)
1〜2か月程度で、講義・ラボ体験・異文化交流がセットになったパッケージ型プログラム。はじめての留学でも参加しやすく、「海外の授業ってどんな感じ?」「現地の学生と話してみたい」という気軽な第一歩にぴったりです。
■ 海外インターンシップ
企業での実務に関われる留学スタイルで、現地の技術系チームに入り、開発や設計に携わることもあります。将来グローバル企業で働きたい人や、自分の専門を実務にどう活かせるかを体感したい人に特におすすめです。
■ 認定・交換留学(学期単位)
自分の大学に籍を残したまま海外で学び、現地の単位を日本の単位に置き換えられる制度です。長期的な留学でも卒業に影響しない場合もあり、奨学金や費用支援制度が使いやすいのもメリット。学業との両立を重視したい人におすすめです。
このように、理系の留学スタイルは目的によって多様です。「まずは短期」「本格的に研究したい」「文化や価値観の違いを現地で感じたい」「就活に活かしたい」など、軸を決めると選びやすくなります。
まとめ
この記事は、留学に関心を持ち始めた理系大学生に向けて書きました。すぐに行動に移す必要はありません。まずは「どんな選択肢があるのか」「自分に合うスタイルはどれか」を知るだけでも、視野は大きく広がります。技術を学ぶことに加えて、それを“誰のために活かすのか”を考える上で、留学は一つの有効なきっかけになり得ます。