フィジカルAIやエッジAIとは?理系分野と関わる注目の5つのAIを企業事例とともに紹介

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AIといえば、ChatGPTやGeminiなど、文章や画像を生成する「生成AI」を思い浮かべる人が多いかもしれません。

しかし、AIは生成AIだけではありません。ロボットや自動車を動かすフィジカルAI、目標に沿って業務を進めるエージェントAI、端末上で素早く処理するエッジAIなど、さまざまなAIが登場しています。

AIは今や、IT業界に限らず、メーカー、医療、物流、建設、金融など、幅広い業界や仕事に浸透し始めています。AIエンジニアを目指していなくても、設計、開発、生産技術、品質管理、研究などを通じて、AIに関わる機会は増えていくでしょう。

この記事では、最近話題になっている5つのAI技術を企業のニュースとともに紹介し、関係する理系分野や仕事について解説します。

生成AI以外にもさまざまなAIがある

ChatGPTやGeminiに代表される生成AIは、文章、画像、音声、動画、プログラムなど、新しいコンテンツを生成するAIです。

 

学生生活でも、情報収集、文章の整理、アイデア出し、プログラミングなどに利用したことがある人は多いでしょう。一方、企業で使われるAIの役割は、コンテンツを生成することだけではありません。

 

周囲の状況を認識してロボットを動かす、工場の設備に異常がないか判断する、研究データから有望な材料を探すなど、AIの活用範囲は現実世界や科学研究にも広がっています。こうしたAIは、フィジカルAI、エージェントAI、エッジAIなど、さまざまな名称で呼ばれています。

 

ただし、それぞれが完全に独立した技術とは限りません。例えば、ロボットがカメラや音声から状況を理解し、自分で作業手順を考えて動く場合、複数のAI技術が組み合わされています。名称だけではなく、「何を実現するAIなのか」「どのような技術者が関わるのか」という視点で理解することが大切です。

 

フィジカルAI:ロボットや自動車を動かすAI

フィジカルAIとは、現実の空間で物を運ぶ、つかむ、移動するといった行動を伴う点が特徴です。具体的には、AIがカメラやセンサーから現実世界の状況を認識し、判断した結果を、ロボットや自動車などの動きにつなげる技術です。

 

活用例としては、工場で作業する産業用ロボット、人と同じ場所で働く協働ロボット、倉庫内の搬送ロボット、自動運転車、医療・介護ロボットなどが挙げられます。フィジカルAIを実現するには、AIだけでなく、機構、材料、モーター、回路、センサー、制御、組み込みソフトウェアなど、幅広い技術が必要です。

 

最近の企業ニュース:NVIDIAがロボット開発を支援

半導体大手のNVIDIAは、2026年3月、ABB、FANUC、KUKA、安川電機などのロボット関連企業が、同社の技術を活用してフィジカルAIの開発や導入を進めていると発表しました。

 

さらに2026年6月には、AIを搭載したロボットを安全に動かすためのシステム「NVIDIA Halos for Robotics」を発表しています。ロボットの知能を高めるだけでなく、人や設備と同じ空間で安全に動かすための技術も重要になっていることが分かります。

 

参考記事:NVIDIA と世界のロボティクスのリーダー企業が、フィジカル AI を実世界へ導入(NVIDIA)

 

関係しやすい理系分野・仕事

機械系では、ロボットの機構設計、駆動部分、材料、強度などに関わります。電気電子系では、センサー、モーター、回路、電源、制御などの技術を生かせます。情報系では、画像認識、機械学習、ロボット制御、組み込みソフトウェアなどが関係します。

 

主な仕事として、ロボット開発、機械設計、制御設計、回路設計、組み込みエンジニア、自動運転開発、生産技術などが挙げられます。

 

エージェントAI:目標に沿って仕事を進めるAI

エージェントAIとは、与えられた目標に向けて、必要な手順を考え、複数の作業を進めるAIです。

 

一般的な生成AIは、入力された質問や指示に対して文章などを返します。一方、エージェントAIは、目標を達成するために作業を分解し、必要な情報を調べる、システムを操作する、結果を確認する、次の対応を考えるといった一連の処理を担います。

 

例えば、「商品の売上状況を確認してレポートを作成する」という目標に対し、社内データの取得、集計、分析、資料作成までを連続して行うイメージです。企業で実用するには、AIに任せる範囲、利用できるデータ、実行できる操作、人が確認するポイントなどを設計する必要があります。

 

最近の企業ニュース:Microsoftが小売業向けAIエージェントを発表

Microsoftは2026年1月、小売業向けのエージェントAI機能を発表しました。

 

店舗運営、商品管理、販売、顧客対応など、小売業のさまざまな業務を支援することが想定されています。エージェントAIは、質問に回答するだけでなく、企業が持つデータやシステムと連携し、実際の業務を進める方向へ発展しています。

 

参考記事:Microsoft propels retail forward with agentic AI capabilities that power intelligent automation for every retail function(Microsoft)

 

関係しやすい理系分野・仕事

エージェントAIの開発では、AIモデルだけでなく、クラウド、データベース、API、業務システム、セキュリティなどの知識が必要です。IT技術が重要となる一方で、製造・物流・金融・医療など、対象となる業務を理解する専門人材も欠かせません。

 

主な仕事として、AIエンジニア、ソフトウェアエンジニア、データエンジニア、社内SE、クラウドエンジニア、セキュリティエンジニア、ITコンサルタントなどが挙げられます。

 

エッジAI:端末や機器の近くで動くAI

エッジAIとは、クラウド上のサーバーだけに処理を任せるのではなく、スマートフォン、カメラ、自動車、ロボット、工場設備など、データが生まれる場所に近い端末でAIを動かす技術です。

 

例えば、自動車が障害物を検知するたびに、データを遠くのサーバーに送って判断していては、通信状況によって反応が遅れる可能性があります。車載コンピューター上で直接処理できれば、通信を待たずに素早く判断できます。また、カメラの映像を端末内で処理することで、映像そのものを外部へ送らず、必要な情報だけを扱うこともできます。

 

一方、端末では、処理能力、記憶容量、消費電力などに制約があります。そのため、AIモデルの軽量化や、AI処理に適した半導体の開発も重要です。

 

最近の企業ニュース:さっぽろ雪まつりでエッジAIを活用

北海道大学発のスタートアップであるAWLは2026年2月、「2026さっぽろ雪まつり」の会場で、エッジAIによる映像解析を提供しました。

 

会場に設置されたカメラの映像を端末側で解析し、来場者の混雑状況を予測する「賑わいAI予測」に活用しています。すべての映像をクラウドへ送り続けるのではなく、現場に近い場所で必要な情報を処理する、エッジAIの特徴を生かした事例です。

 

参考記事:2026さっぽろ雪まつり「J:COMひろば」でエッジAI映像解析を提供(PR TIMES)

 

関係しやすい理系分野・仕事

電気電子系では、半導体、回路、電源、通信、センサーなどの知識を生かせます。情報系では、組み込みソフトウェア、画像処理、AIモデルの軽量化、IoT、ネットワークなどが関係します。

 

主な仕事として、AIエンジニア、組み込みエンジニア、半導体設計、回路設計、通信技術者、IoTエンジニア、車載システム開発などが挙げられます。

 

マルチモーダルAI:複数の情報を組み合わせるAI

マルチモーダルAIとは、文章だけでなく、画像、映像、音声、センサーデータなど、異なる種類の情報を組み合わせて扱うAIです。

 

人間は会話の内容だけでなく、相手の表情、声、周囲の状況などを組み合わせて判断しています。同じように、AIも複数の情報を扱うことで、より複雑な状況を理解できるようになります。例えば、医療画像と問診内容を組み合わせた診断支援、製品の映像と設備音を使った異常検知、カメラと距離センサーを使った自動運転などが考えられます。

 

生成AIにおいても、文章から文章を作るだけでなく、画像を見て回答する、音声で会話する、映像を理解するといった機能が増えています。

 

最近の企業ニュース:GoogleがGemini Omniを発表

Googleは2026年5月、マルチモーダルAI「Gemini Omni」を発表しました。Gemini Omniは、文章、画像、音声、映像など、さまざまな入力を扱い、まずは動画を生成・編集する機能から提供されています。文章だけを処理するAIから、複数の情報を理解し、異なる形式のコンテンツを生み出すAIへと進化している例といえます。

 

参考記事:Gemini Omni を発表(Google Japan)

 

関係しやすい理系分野・仕事

情報系では、画像処理、音声認識、自然言語処理、機械学習などが関係します。電気電子系や物理系では、カメラ、マイク、センサー、信号処理、計測などの知識を生かせます。

 

主な仕事として、画像認識エンジニア、音声認識エンジニア、センシング技術開発、医療機器開発、自動運転開発、製品検査、ヒューマンインターフェース開発などが挙げられます。

 

サイエンティフィックAI:科学研究を支援するAI

サイエンティフィックAIとは、科学研究や技術開発にAIを活用する考え方です。「AI for Science」と呼ばれることもあります。

 

研究データの分析、分子や材料の性質の予測、実験条件の最適化、シミュレーションの効率化などに利用されます。例えば、新しい材料や薬を開発する場合、考えられる候補を一つずつ実験していては、膨大な時間と費用がかかります。

 

AIを使って有望な候補を絞り込むことができれば、研究開発を効率化できる可能性があります。ただし、AIが示した予測が正しいとは限りません。結果が科学的に妥当かを専門家が判断し、実験やシミュレーションによって検証する必要があります。

 

最近の企業ニュース:Google DeepMindが研究支援AIを発表

Google DeepMindは2026年5月、研究者を支援する「Co-Scientist」を発表しました。複数のAIエージェントが、科学的な課題に対する仮説を考え、互いに検討しながら改善する仕組みです。

 

同社は、科学研究向けのツール群「Gemini for Science」も発表しています。AIの活用が、データ分析だけでなく、仮説の検討や実験の設計などにも広がっていることが分かります。

 

参考記事:Gemini for Science: AI の実験とツールで新たな発見の時代を切り拓く(Google Japan)

 

関係しやすい理系分野・仕事

化学系では、材料探索、分子設計、反応予測などへの活用が考えられます。生命科学系では、創薬、タンパク質、遺伝子、医療データなどの研究と関係します。数学・物理系では、数理モデル、シミュレーション、アルゴリズム、気象予測などに関わる可能性があります。

 

主な仕事として、研究開発職、材料開発、創薬研究、計算化学、計算物理、バイオインフォマティクス、データサイエンティストなどが挙げられます。

 

理系就活ではAIとの関わり方に注目しよう

今回紹介した事例からも分かるように、AIに関わる仕事は、AIモデルを開発するAIエンジニアだけではありません。

 

ロボットを動かすには機械、電気電子、制御の技術が必要です。工場や自動車の中でAIを動かすには、半導体、回路、通信、組み込みソフトウェアなどの技術が必要です。科学研究にAIを活用する場合も、化学、生命科学、物理、数学などの専門知識がなければ、AIが出した結果を正しく評価できません。

 

これからは、AIを開発する人に加えて、自分の専門分野でAIを活用する人、AIの結果を評価する人、AIと製品や設備をつなぐ人も重要になります。

 

企業研究で確認したいポイント

企業研究では、「AIに取り組んでいるか」だけでなく、何のために、どこでAIを使っているのかを確認してみましょう。

 

製品そのものにAIを搭載している企業もあれば、生産設備、品質検査、研究開発、顧客向けサービス、社内業務などにAIを活用している企業もあります。同じ企業でも、職種によってAIとの関わり方は異なります。

 

採用サイトだけでなく、企業の研究開発ページ、技術ブログ、ニュースリリース、製品情報などを見ると、具体的な取り組みを見つけやすくなります。そのうえで、自分の専門分野が次のどこに関わるのかを考えてみましょう。

 

■取り組み例

・カメラやセンサー、実験などを通じて、AIが判断するためのデータを集める

・AIが判断しやすいように、データを整理・分析する

・AIの判断結果を、機械や製品、システムの動きにつなげる

・AIを製品やサービスに組み込み、利用者へ提供する

・AIを使って、研究、設計、生産、検査、保守などの業務を改善する

・AIが出した結果を、専門知識を基に評価・検証する

 

AIそのものを専門にしていなくても、自分が学んでいる分野とAIが交わる仕事は数多くあります。

 

まとめ

AIといえば、ChatGPTやGeminiなどの生成AIが有名ですが、実際には目的や使われる場所によって、さまざまなAIがあります。

 

・フィジカルAI:ロボットや自動車などを現実世界で動かします。

・エージェントAI:目標に沿って複数の業務を進めます。

・エッジAI:端末や機器に近い場所で素早くデータを処理します。

・マルチモーダルAI:文章、画像、音声、映像などを組み合わせて扱います。

・サイエンティフィックAI:実験、材料、創薬、シミュレーションなどの科学研究を支援します。

 

これらのAIには、情報系だけでなく、機械系、電気電子系、化学系、バイオ系、数学・物理系、土木建築系など、幅広い理系分野が関係しています。AIエンジニアを目指していなくても、今後は製品開発、設計、生産技術、品質管理、研究などを通じて、AIに関わる機会が増えていくでしょう。

 

話題のAI技術を知ることをきっかけに、自分の専攻がどのような技術や仕事につながるのか、企業の具体的な取り組みとあわせて調べてみてください。

 

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