東京理科大学・硤合憲三さんがノーベル化学賞を受賞|理系大学生向けに「不斉自己触媒反応」などを速報

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2026年10月7日、ノーベル化学賞に東京理科大学名誉教授の硤合憲三(そあい・けんそう)さんと、パリ・サクレー大学名誉教授のアンリ・カガンさんが選ばれました。日本人のノーベル化学賞受賞は、2025年の京都大学・北川進さんに続き2年連続です。

発表されたばかりの今回のニュースについて、現時点で公開されている情報をもとに、受賞理由や研究内容を理系学生向けにできるだけ分かりやすく整理します。

ノーベル化学賞を受賞した硤合憲三さん

スウェーデン王立科学アカデミーは2026年10月7日、東京理科大学名誉教授の硤合憲三さんと、パリ・サクレー大学名誉教授のアンリ・カガンさんの2人に、2026年のノーベル化学賞を授与すると発表しました。

 

受賞の理由についてノーベル委員会は「不斉有機合成における非線形効果と自己触媒反応の発見に対して」と説明しています。硤合さんは、化学反応によって生まれた物質が触媒となり、自分と同じ型の物質をさらに増やしていく「不斉自己触媒反応」を世界で初めて発見しました。この反応は「硤合反応(Soai reaction)」とも呼ばれています。

 

今回の受賞を受け、高市早苗総理もXで早々に祝意を表明しました。硤合さんと研究に携わってきた関係者を祝福するとともに、不斉自己触媒反応について「生命の起源」という人類共通の謎の解明にもつながる画期的な成果と紹介。「日本人として、とても誇りに思います」と受賞をたたえています。

 

日本人のノーベル化学賞受賞は、2025年の京都大学・北川進さんに続き2年連続となりました。

 

「不斉自己触媒反応」とは?

「不斉有機合成」「非線形効果」「自己触媒反応」。受賞理由には、化学を専門に学んでいなければイメージしにくい言葉が並んでいます。

 

今回の発表からまだ時間が経っておらず、研究内容も非常に専門的です。ここでは現時点で公開されている情報をもとに、リケイマッチ編集部なりにできるだけシンプルに整理します。

 

まず前提として、同じ成分の分子でも「右手型」と「左手型」のような2種類が存在することがあります。右手と左手は、鏡に映すと同じような形をしています。しかし、左手用の手袋を右手にはめても、ぴったりとは合いません。

 

分子の世界にも、これと似た関係があります。同じ成分でも「右手型」と「左手型」で、生物の体内での働き方などが変わる場合があります。そのため医薬品などでは、どちらの型の分子をつくるかが重要になることがあります。

 

ここまでは、「分子にも右と左のような違いがあり、その違いが重要になることがある」という話です。では、硤合さんが発見した反応では何が起こるのでしょうか。

 

「不斉自己触媒反応」では、反応によって生まれた分子自身が、次の反応を進める触媒として働きます。さらに、片方の型が少し多ければ、その型がさらに増えていきます。

 

イメージとして、最初が「右手型:50.1% / 左手型:49.9%」という、ほんのわずかな差だったとします。その小さな差が反応を繰り返すうちに拡大し、一方の型が圧倒的に多い状態になっていく。

 

もちろんこれは理解するために単純化した例で、実際の化学反応はより複雑です。ただ、「最初にあったごく小さな左右の偏りが、自らを増やす反応によって大きくなっていく」と考えると、今回の研究を理解する入口になりそうです。

 

なぜ生命の起源にもつながる研究なのか

ここでもう一つ、不思議なことがあります。私たちの体をつくるアミノ酸は主に「左手型」、DNAなどを構成する糖は「右手型」に偏っています。

 

自然界に左右両方の型があり得るのなら、なぜ生命では一方の型が多く使われているのでしょうか。これは「生命のホモキラリティ」と呼ばれ、生命の起源を考える上でも重要なテーマの一つです。

 

硤合さんが発見した不斉自己触媒反応では、ごく小さな左右の偏りが反応によって増幅されていきます。つまり、生命が誕生する前の世界でもし小さな左右の偏りが生じていたとすれば、それがどのように大きな偏りへと変わり得るのかを考える手掛かりになります。

 

今回の研究だけですべてが解明されたわけではありません。それでも、一見すると化学反応についての研究が、「なぜ私たちを構成する分子は左右どちらかに偏っているのか」という生命そのものに関わる問いにつながっているところも、この研究の興味深い点です。

 

1995年の発見から約30年後のノーベル賞

硤合さんが不斉自己触媒反応を初めて報告したのは1995年です。そこから約30年を経た2026年、ノーベル化学賞の受賞が決まりました。

 

研究成果は、発表された時点ですべての価値が分かるとは限りません。その後、多くの研究者によって検証されたり、新たな研究へ発展したりしながら、長い時間をかけて重要性が明らかになっていく研究もあります。

 

受賞後の会見では、長年の研究について「はたから見たら苦しいことが続いていたかもしれないが、本人はそう思っていない」と振り返り、研究は楽しかったと話しています。有機化合物の研究については、「山があるかどうかも分からない暗い場所を、ヘッドライトで照らしながら進んでいくような感覚」だと表現しました。

 

そして、約30年にわたる研究を支えた存在として学生にも触れています。「優秀な学生ら、人との出会いに恵まれた」「学生の存在があって初めて到達できた」と感謝を述べました。

 

研究で大切にしていることを問われると、「うまくいかないことがあっても、実験をおこなう」とも語っています。ノーベル賞というと、一人の研究者による大きな発見に目が向きがちです。一方で今回の会見からは、研究室で学生を含む多くの人と研究を積み重ねてきた時間も、その成果につながっていることが伝わってきます。

 

大学で学ぶことと、その先にある研究

大学の授業では、有機化学や物理化学、数学、物理など、これまでの研究によって明らかになってきた理論や法則を学びます。

 

一方、研究室に入り卒業研究や修士研究などに取り組むと、「まだ答えが分かっていないこと」を扱う機会が増えていきます。今回ノーベル化学賞につながった研究も、不斉自己触媒反応という現象の発見から、生命を構成する分子がなぜ一方の型に偏っているのかという、現在も研究が続く大きなテーマへとつながっています。

 

大学で学んでいる専門科目も、その先にはまだ答えのない研究の世界があります。卒業研究などに取り組んでいると、自分が行っている実験や解析が社会とどうつながっているのか、すぐには見えないこともあります。

 

今回の受賞は、1995年に報告された研究が、その後も長く研究され続け、約30年後にノーベル賞として評価された例でもあります。目の前で取り組んでいる研究がどこにつながっていくのか。それは研究している本人にも、今の時点では分からないのかもしれません。

 

まとめ

2026年のノーベル化学賞に、東京理科大学名誉教授の硤合憲三さんと、パリ・サクレー大学名誉教授のアンリ・カガンさんが選ばれました。

 

硤合さんが発見した「不斉自己触媒反応」は、ごく小さな分子の左右の偏りが大きく増幅されていく現象を示した研究です。そしてその研究は、「生命を構成する分子はなぜ一方の型に偏っているのか」という大きな問いにもつながっています。

 

1995年に報告された研究が約30年を経てノーベル化学賞につながった今回の受賞。大学で学ぶ専門分野の先に、まだ答えのない研究の世界が広がっていることを感じられるニュースでもあります。

 

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