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2026年9月19日(更新:2026年9月19日)
理系採用では、学生へのアプローチ方法や選考設計だけでなく、「どのような学生が大学で学んでいるのか」「理系学生の母集団が今後どう変わっていくのか」を知ることも重要です。
近年、日本では理工系・デジタル系学部の新設や定員拡大、理系女子を増やす取り組みなど、STEM人材を増やす動きが進んでいます。一方、日本の学生は数学・科学で世界的に高い水準にありながら、大学でSTEM分野を専攻する割合は決して高くありません。
本記事では、STEM教育や大学を取り巻く変化を整理しながら、今後の理系採用で押さえておきたいポイントを考えます。
目次
採用担当者も知っておきたいSTEMとは?
STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字を組み合わせた言葉です。単に数学や理科を学ぶことだけではなく、複数の分野の知識を組み合わせながら、課題を発見し、考え、解決していく力を育てる考え方として使われています。
例えば自動車開発でも、機械工学だけでなく、電気電子、制御、情報、数学など多くの専門分野が関係します。半導体、ロボティクス、生成AI、エネルギーなども同様です。
採用市場でも「理系人材」と一括りにされることがありますが、実際には学生が学んでいる分野や専門性は幅広く、それぞれが異なる産業や職種につながっています。
さらに近年は、情報技術と機械、データサイエンスと生命科学など、複数の専門領域を横断する分野も広がっています。理系採用を考えるうえでも、従来の「機械系」「電気系」「情報系」といった分類だけでなく、大学教育そのものが変化していることを押さえておく必要があります。
日本は理数力が高い一方、STEM人材の母集団は大きくない
日本の理系人材について考えるとき、まず知っておきたいのが、若者の理数力そのものは国際的にも高いという点です。
OECDが2026年9月に公表したPISA 2025では、日本の15歳は数学・科学ともにOECD平均を上回りました。科学では17%の生徒が上位レベルに達しており、OECD平均の7%を大きく上回っています。数学でも、日本の上位レベルは22%に対してOECD平均は8%です。つまり、日本では理数分野で高い能力を持つ若者が少ないわけではありません。
一方、大学での専攻を見ると違った姿が見えてきます。OECDの「Education at a Glance 2025」によると、学士課程の卒業者に占めるSTEM分野の割合は、日本では20%。OECD平均は23%です。
中高生の理数力が高いからといって、そのまま多くの学生が大学でSTEM分野を選んでいるわけではありません。
採用側から見ると、これは重要なポイントです。AIやソフトウェアだけでなく、半導体、自動車、産業機械、電気機器、エネルギーなど、多くの企業が理系人材を必要としています。
企業側の採用対象が広がる一方、理系学生の母集団が急激に増えるわけではないため、特定の専攻では企業間の採用競争が続くことも考えられます。
参考:OECD「PISA 2025 Results: Japan」
参考:OECD「Education at a Glance 2025: Japan」
理工系・デジタル系学部の拡大で学生構成が変わる
一方、日本では理系人材を増やすため、大学側の「受け皿」を広げる動きも進んでいます。
代表的なのが、文部科学省による「大学・高専機能強化支援事業」です。デジタルやグリーンなどの成長分野を担う人材を増やすため、大学における理工農系学部への転換や、情報系学部・研究科の定員拡充などが支援されています。
近年の大学を見ると、「情報学部」「データサイエンス学部」などの新設に加え、既存学部の再編によってAI、データサイエンス、情報技術などを学ぶコースを設ける例も増えています。
こうした変化は、中長期的には新卒採用市場にも影響します。例えば、これまで情報系人材を採用するときに「情報工学科」「情報科学科」などを主な対象としていた企業でも、今後はデータサイエンス系や複合領域の学部から採用候補者が出てくる可能性があります。
機械や電気電子についても同じです。大学によっては「先進工学」「創造工学」「システムデザイン」などの名称の中に、機械、電気電子、制御、材料などの専門分野が含まれていることがあります。
学部・学科名だけで対象学生を判断すると、本来採用対象になり得る学生を見落とす可能性があります。大学の学部構成が変わる中、採用側も「どの大学の何学部か」だけではなく、「そこで何を学んでいるのか」まで見ることがこれまで以上に重要になります。
参考:文部科学省「成長分野をけん引する大学・高専の機能強化に向けた基金による継続的支援」
理系女子を増やす取り組みと採用市場
理系人材の母集団を考えるうえで、もう一つ注目したいのが女性比率です。
日本では、理工系分野に進む女性が国際的に見ても少ない状態が続いています。政府は理工系女子人材の倍増を掲げており、大学の工学系学部に占める女子学生の割合を2025年の18%から、2040年には36%まで高める目標を示しています。
そのため、女子中高生が理工系分野に触れる機会の提供、女性研究者や技術者などのロールモデル発信、大学における理工系学部の新設・転換など、進路選択の段階からさまざまな取り組みが進められています。
大学入試でも、理工系分野を中心に女性を対象とした「女子枠」を設ける大学が出てきています。海外でもSTEM分野の男女差は課題ですが、日本は特に女性比率が低い状況にあります。今後こうした取り組みが進めば、理系採用市場における学生構成も少しずつ変化していく可能性があります。
企業側にとっても、理系女性の採用を単に「女性採用」のテーマだけで捉えるのではなく、理系人材全体の母集団がどう変化しているのかという視点で見ることが重要です。学生側の選択肢が広がる一方で、企業がどのような技術者のキャリアや働き方を提示できるのかも、今後より問われていくと考えられます。
これからの理系採用で意識したいこと
理系学生を取り巻く環境が変わる中、採用側も従来の探し方をそのまま続けるだけではなく、学生の変化を把握していく必要があります。
まず意識したいのが、専攻の見方です。例えば機械設計職だから機械工学科、ITエンジニアだから情報工学科といった探し方は分かりやすい一方、現在は学部・学科の名称や教育内容が多様化しています。
大学名や学科名だけで検索条件を狭めすぎず、授業、研究テーマ、使用している技術、学生が興味を持っている領域なども含めて見ることで、採用対象を広げられる可能性があります。
また、新しく設置された学部や学科について知ることも重要です。採用実績のある大学だけを毎年追いかけていると、新たに理系人材を輩出し始めた大学や学部を把握できないことがあります。特に情報・デジタル領域では、数年前には存在しなかった学部から学生が就職市場へ出てくるケースも増えていきます。
さらに、理系学生が必ずしも自分の専門と企業の仕事とのつながりを理解しているとは限りません。例えば、数学や物理を学ぶ学生が製造業でどう活躍できるのか、電気電子を学ぶ学生が自社のどの製品に関われるのかなど、企業側から具体的に示すことで初めて選択肢として認識されることもあります。
理系採用では「自社に合う学生を探す」だけでなく、「どのような学生が増えているのか」「学生から自社がどう見えているのか」を知ることも母集団形成の一部です。学生の専攻や大学教育の変化を継続的に把握することが、これからの理系採用ではより重要になっていきます。
まとめ
日本の中高生は数学・科学で国際的にも高い水準にある一方、大学卒業者に占めるSTEM分野の割合はOECD平均を下回っています。その中で現在は、理工系・デジタル系学部の新設や定員拡大、理工系女子を増やす取り組みなど、理系人材の母集団を広げようとする動きが進んでいます。
こうした変化によって、今後は学生数だけでなく、学部・学科の名称や学んでいる内容、男女構成なども少しずつ変わっていくと考えられます。
理系採用というと、スカウト、求人、選考など採用活動そのものに目が向きがちです。しかし、その前提となる「理系学生がどこで、何を学んでいるのか」を知ることも重要です。大学や学生を取り巻く変化まで把握することで、これまで採用対象として見えていなかった学生に気付いたり、自社の魅力を伝える方法を見直したりするきっかけにもなります。
理系学生の動向を知ることも、理系採用を考えるうえで欠かせない情報の一つといえるでしょう。
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