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2026年5月26日(更新:2026年5月26日)
メーカー(製造業)における技術職・研究開発職の中途採用では、開発部門から提示された要件をそのまま求人票に反映しても、なかなか候補者が集まらないことがあります。
ただ、営業やバックオフィスと比較すると、製品名・設計領域・使用ツール・開発工程・専門用語などの専門的な内容が多く、採用要件の調整が難しい場面も少なくありません。
この記事では、メーカーの技術職採用を例に、採用要件をどのように分解し、部門とすり合わせながら候補者像を広げていくかを整理します。
目次
技術職採用における採用要件について
技術職・研究開発職の採用では、開発部門との要件調整に悩む採用担当者も多いのではないでしょうか。
メーカーの採用担当者であれば、開発部門と採用要件をすり合わせる場面が多くあります。特に、設計・生産技術・実験評価・研究開発などの専門職種における採用では、営業職やバックオフィス職と比べて、調整が難しくなりやすい側面があります。
たとえば、部門から次のような要望が出ることがあります。
■開発部門の要望例
・ポンプの機械設計経験がある方がほしい
・CATIA V5の使用経験を必須にしたい
・自動車部品メーカーでの開発経験がある方がよい
・量産設計や不具合対応まで経験している方がよい
もちろん、部門側がそのように考える背景には理由があります。実際の業務で必要な知識や経験を踏まえると、できるだけ近い経験者を採用したいと考えるのは自然です。
一方で、その条件をすべて必須にしてしまうと、採用ターゲットが極端に狭くなることがあります。さらに、条件を満たす人材がいたとしても、同じような経験者を求める同業他社や大手企業と比較されるため、提示年収や働き方の面で検討の土台に乗りにくいケースもあります。
そのため、採用担当者には、部門から出てきた要件をそのまま受け取るだけでなく、「どの条件は本当に必須なのか」「どの条件は入社後に教育できるのか」「近い経験で代替できるものはないか」を一緒に整理する役割が求められます。
人事が技術をすべて理解する必要はありません。ただし、部門に対して「このような経験者であれば検討できないか」と提案できると、採用の可能性を広げやすくなります。
理想を詰め込むと、候補者は限られる
メーカー技術職の採用では、最初に理想的な候補者像を整理することは重要です。ただし、理想要件をそのまま必須条件にしてしまうと、候補者が大きく限られることがあります。
たとえば、ポンプ製品を開発している機械メーカーであれば、次のような経験者を求めたくなるかもしれません。
■ポンプメーカー/機械設計の募集要件例
・ポンプ製品の機械設計経験
・3DCADを用いた設計経験
・CATIA V5など、自社で使用しているCADの経験
・流体、圧力、配管、回転機械などに関する知識
・試作評価、不具合対応、量産設計の経験
・顧客仕様に応じたカスタマイズ設計の経験
これらをすべて満たす方がいれば、即戦力として期待できます。部門側がこのような要件を求めること自体は、決して不自然ではありません。しかし、採用市場で考えると、ポンプ製品の設計経験者はそもそも多くない可能性があります。さらに、特定のCADや工程経験まで必須にすると、対象者はさらに少なくなります。
自動車部品メーカーでも同じです。たとえば「自動車部品の機械設計経験」「NX CADの経験」「量産設計経験」「顧客折衝経験」「不具合対応経験」などをすべて必須にすると、候補者はかなり絞られます。
ここで重要なのは、要件を単に下げることではありません。必要なのは、理想要件を分解し、採用時点で本当に必要な経験と、入社後に教育・習得できる経験を切り分けることです。
たとえば、「ポンプ製品の経験は歓迎にしつつ、機械設計や3DCADの経験を必須にする」「業界経験は不問で、量産設計や顧客折衝経験を積んでいる方を対象にする」など、このように整理すると「条件を緩める」のではなく、「活躍可能性のある候補者を見落とさないために要件を再設計する」という考え方になります。
採用要件は「入社後に習得できるか」で分ける
採用要件を作る際は、必須条件と歓迎条件を分けることが重要です。ただし、それだけでは少し不十分です。技術職採用では、さらに一歩踏み込んで、「その要件は入社後でも習得しやすいものなのか」を考える必要があります。
たとえば、機械設計職の採用で「CATIA V5の使用経験」を必須にした場合を考えます。
この条件を厳密に見ると、同じ製品領域で豊富な設計経験を持っていても、使用CADがSolidWorks・NX・Pro/E等であれば対象外になってしまいます。しかし、3DCADを使った機械設計経験が十分にあり、図面作成や設計変更、製造性を踏まえた設計の流れを理解している方であれば、CADソフトの違いは入社後にスムーズに習得できると考える企業もあります。
この場合、「CATIA V5経験必須」とするのではなく、「3DCADを用いた機械設計経験を必須、CATIA V5経験は歓迎」と整理することで、候補者の幅を広げることができます。
一方で、中には入社後の習得が難しいスキルもあります。たとえば、機械図面を読む力、設計意図を考える力、製造性や組立性を意識した設計経験、不具合原因を技術的に考える力などは、短期間で身につけるのが難しい場合があります。
採用要件を整理する際は、次のように分けて考えると分かりやすくなります。
■入社後に教育しやすい可能性がある要件
・自社で使用しているCADソフトの操作
・自社製品に固有の仕様や部品知識
・社内の設計ルールや承認フロー
・業界特有の用語や顧客対応の進め方
・一部の評価方法や試験手順
■入社時点で重視したい要件
・機械図面や回路図面を読めること
・力学の基礎知識があること
・製品構造を理解しながら設計できること
・製造性や組立性を意識した設計経験があること
・不具合や品質課題に対して技術的に考えた経験があること
・関係部署と調整しながら業務を進めた経験があること
もちろん企業によって差分が出るところですが、このように「入社後に教育できる要件」と「入社時点で重視したい要件」を分けることで、部門担当者と同じ視点に立って会話ができます。
そして、採用担当者から部門に対しても、「~~の募集要件に加えてCATIA V5も必須にすると候補者が少なくなります。NXなど他の3DCAD経験者まで広げることはできませんか」「自社製品の知識は入社後に教育できる前提で、設計の土台となる経験を重視する形ではどうでしょうか」といった提案がしやすくなります。
製品経験は、製品名だけでなく技術要素から広げる
技術職採用では、製品経験の広げ方も重要です。
ポンプ製品を開発している企業であれば、まずはポンプ設計の経験者を探すことも珍しくありません。そこから少し広げる場合、コンプレッサー、送風機、ファンなど、類似製品や関連製品の経験者を検討することがあります。これはよくある広げ方ですが、製品名だけで考えると候補者の幅には限界があります。
ポンプには、流体・圧力・駆動部・回転機構・モーター・耐久性など、さまざまな技術要素が含まれます。そのため、企業によっては、ポンプそのものの経験だけでなく、製品を構成する技術要素から採用ターゲットを広げることもあります。
たとえば、ポンプ製品の経験者に限定するのではなく、まずは流体機器や回転機械の経験者まで広げる考え方があります。さらに、ポンプに含まれる駆動部や回転機構に着目すれば、駆動系の設計経験者や、駆動系を含む製品の経験者まで検討できる場合があります。その結果、産業機械、FA装置、自動車部品、設備機械などの機構設計経験者も候補に入る可能性があります。
自動車部品メーカーでも同じです。たとえば、自動車部品の経験者に限定するのではなく、量産品の設計経験、樹脂・金属部品の設計経験、品質要求の高い製品開発経験、可動部や筐体の設計経験などに分解して考えることで、近い経験者を見つけやすくなります。
もちろん、どこまで広げられるかは部門側の判断が必要です。ただ、部門側が最初からこのような発想を持っているとは限りません。そのため、人事から部門に対して、次のように確認できると有意義です。
・ポンプそのものの経験者だけでなく、流体に関わる製品経験者まで広げられないか
・製品経験ではなく、駆動部や回転機構の設計経験で見られないか
・自動車業界経験者に限定せず、家電や産業機械の経験者はどうか
・機械設計職に限定せず、評価や生産技術で製品構造に詳しい方はどうか
・特定のCADに限定するのではなく、3DCAD経験者として見られないか
ただ「要件を下げられませんか」と聞くよりも、「このような経験者であれば検討できませんか」と具体的に提案する方が、部門側も判断しやすくなります。
必須にこだわるなら、市場と待遇条件を確認する
採用要件を広げることが重要とはいえ、すべての条件を緩められるわけではありません。部門として、どうしても譲れない必須条件がある場合もあります。
その場合は、その条件を外すべきかどうかだけで議論するのではなく、まず「その条件を満たす求職者が市場に存在するのか」を確認する必要があります。
たとえば、次のような条件をすべて必須にする場合です。
・ポンプ製品の設計経験がある
・CATIA V5の使用経験がある
・流体や回転機械の知識がある
・量産設計から不具合対応まで一通り経験している
・即戦力として一人で設計を任せられる
このような方が市場に一定数いるのであれば、採用活動を続ける選択肢もあります。しかし、実際には対象者が非常に少ないこともあります。
確認方法としては、ダイレクトリクルーティングサービスを導入している場合、まずは欲しい条件をそのまま検索してみる方法があります。たとえば、ビズリーチやdodaダイレクトなどで、「職種:機械設計」「フリーワード:ポンプ CATIA」などの条件を組み合わせて検索し、どのくらい候補者が出てくるかを確認します。
検索結果については部門担当者にも一緒に見てもらうと、要件の相談がしやすいです。部門側が想定している条件を入れた結果、候補者がほとんど出てこないのであれば、「この条件のままだと市場に対象者が少ない」という共通認識を持つことができます。
他の方法として、取引のある人材紹介企業(転職エージェント)に確認する方法もあります。単に「こういう人は紹介できますか」と聞くだけでなく、次のような観点で確認すると、より採用市場の実態を把握しやすくなります。
・この条件を満たす候補者は、実際に登録があるのか
・同じような人材を、どのような企業が採用しようとしているのか
・競合企業や同業大手は、どのくらいの年収でオファーしているのか
・自社の提示年収や勤務地、働き方で候補者が検討してくれる余地はあるのか
・同業他社はどこまで採用要件を広げているのか
こうした情報を集めることで、「条件を緩和するかどうか」ではなく、「この条件のまま採用できる現実性がどのくらいあるのか」を部門と話しやすくなります。
さらに、仮に市場に存在していたとしても、次に考えるべきなのは「自社のオファー条件で検討の土台に乗るか」です。必須条件を詰め込むほど、同業の大手企業や競合企業も強く求める人物である可能性が高いです。その場合、他社が自社より数百万円高い年収を提示しているのであれば、候補者から見て自社が選択肢に入りにくくなることもあります。
採用が長引くケースでは、単に応募が来ないのではなく、次のような問題が起きていることがあります。
・そもそも条件を満たす人が市場に少ない
・条件を満たす人がいても、転職市場に出てきにくい
・競合企業や同業大手の提示年収が高い
・自社の年収、勤務地、働き方では比較対象に入りにくい
・求める要件に対して、待遇やポジションの魅力が見合っていない
この状態で必須条件を変えずに採用活動を続けても、採用期間だけが長引いてしまう可能性があります。そのため、人事から部門に確認する際は、「条件を緩和できませんか」と聞くだけではなく、次のような観点で話すことが重要です。
・この経験は入社時点で必須か、入社後のキャッチアップでもよいか
・同じ製品経験が必要か、近い技術要素の経験でも検討できるか
・特定業界の経験が必要か、製造業での設計経験まで広げられるか
・特定CADの経験が必須か、他の3DCAD経験者でも教育できるか
・この条件をすべて満たす人が、実際に市場にどのくらいいるか
・その人材に対して、自社の提示年収や働き方は魅力として成立するか
要件を守ること自体が目的になってしまうと、採用活動は前に進みにくくなります。必須条件にこだわる場合ほど、市場に存在する人材なのか、存在したとしても自社が選ばれる条件を提示できているのかを確認することが大切です。
まとめ
メーカー技術職の採用では、募集要件の調整も結果を左右する重要なポイントです。入社後に習得できる要件か、技術要素から候補者像を広げられるかを整理することで、自社で活躍し得る候補者と出会える可能性が高まります。必須条件にこだわる場合は、市場に対象者がいるか、自社条件で検討される余地があるかも確認しましょう。
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